転ばぬ先のバランスボール 福岡市職員が身をもって実証中!

転倒事故防止に向けた効果が期待されているバランスボール

記事 INDEX

  • 意外と気にならない
  • 転んだでは済まない
  • 健康でよい仕事を!

 年齢を重ねるごとにつまずき、転びやすくなる――。けがにもつながる体力低下によるリスクを避けるため、事務用イスの代わりにバランスボールを使う実証実験が福岡市役所で始まりました。参加しているのは40~60歳代の職員約100人。8月下旬までの約3か月間で効果を検証し、その後の活用などを検討する考えです。

意外と気にならない

 実証実験は5月14日に本格スタート。市役所の各職場では、バランスボールに座って事務作業にあたる職員の姿が見られるようになりました。


福岡市役所では一部職員がバランスボールを使用

 「思ったほど気になりません。慣れれば大丈夫」。ふくおか応援寄付推進担当の職場で14日、課長の宮﨑真吾さん(47)は、バランスボールに座ってパソコンに向かった実感を語りました。

 仕事や家庭での多忙さに追われるうち、体を動かすことが減ったという宮﨑さん。「気づけば最近、何もないところでつまずくようになって……。これをきっかけに、運動習慣を取り戻したい」と意気込みます。

 同担当主査の鳥集健吾さん(48)も「(バランスボールに座って)姿勢が整うことにより、仕事への集中力が増す感じがします。デスクワーク中心の職場ですが、この機会によい体づくりをしていきたい」と話しました。


ボールが転がるのを防ぐリングが付属


advertisement

転んだでは済まない

 実証実験には、スポーツクラブを運営するルネサンス(東京)とスポーツオアシス(同)が協力。ルネサンスは筋力測定などの支援、スポーツオアシスは固定用リングが付いたバランスボールを貸与します。両社の提案に福岡市が応じ、実証することになったそうです。


片足立ちなどのセルフチェックが行われた講習会

 14日には、バランスボールの使い方や簡単なストレッチ・トレーニングを紹介する講習会も開催。片足を浮かせてイスから立つ、といったセルフチェックで市職員たちが現状を確認していました。講師を務めたルネサンス社員は「筋肉はやればやるほど変わる。気力のある今、始めることで10~20年後が違ってきます」と鼓舞しました。

 市によると、職員の公務上の災害は年間100件前後あり、原因に占める「転倒」の割合は増加傾向にあります。加齢に伴うリスクも懸念され、2013~23年度の11年間では、転倒による負傷の割合は、20歳代が16%、30歳代が19%なのに対し、40歳代25%、50歳代31%、60歳代50%と、年齢に応じてどんどん高くなります。


講習会では、加齢による転倒リスクなども解説

 「転んだだけ」と侮ることはできません。転倒による負傷では、手や肩などの「骨折」が目立ち、生活や業務に支障が生じることもあります。

 一方、市は23~31年度にかけて、定年を以前の60歳から65歳へと段階的に延長。年齢を重ねても活躍できる環境整備が求められており、市職員健康課の松田孝子課長(47)は「筋力やバランス能力を高めて転倒リスクを下げ、元気に職務にあたることでよい市民サービスを提供したい」と話します。


ボールに座ってできるストレッチなども紹介

 同課では4月から先行してバランスボールを導入しており、松田課長は「以前はできなかったトレーニングが行えるようになりました」と効果を実感しているそうです。

健康でよい仕事を!

 すでにバランスボールが職場になじんでいる自治体もあります。和歌山県田辺市では21年11月~22年1月、職員が自費で購入したバランスボールを、業務中にイス代わりに使うことを試験的に許可。すると「持病の腰痛が改善された」「姿勢が良くなった」などの効果が報告され、その後も使用が認められています。

 長崎県五島市も22年11月~23年8月、同様に使用を許可。長寿介護課では約30人が始め、異動・退職者や体調面の理由でやめた人らを除く約10人の健康診断では、コレステロール値や背・腰など体の痛み、腹囲などの改善がみられたとのこと。現在も引き続き使用している職員もいるそうです。

 ルネサンスによると、健康経営の観点から、職場にバランスボールの導入などを進める企業もみられるそうです。


講習会での助言をふまえ、業務の合間にストレッチする福岡市職員。前から見ると立ち上がっているだけのような姿勢(左)で、無理なく体を伸ばせる

 福岡市では8月下旬に測定会を行い、実証実験の効果を確認。その後、事業の延長や内容の変更などを検討していく方針です。



advertisement

この記事をシェアする