コロナ禍で会えなかった父に2年半越しの「さよなら」を 北九大のアン先生が渡米へ

(右から)父ロンさん、クレシーニさん、母パットさん

 北九州市立大准教授のアン・クレシーニさん(48)(福岡県宗像市)が、2年半前に亡くなった父の葬儀を古里の米国バージニア州ウィスビルで9月10日に行う。当時は、新型コロナウイルスの水際対策で日本を離れると戻ってこられなくなる状況だったため、父の元に駆け付けることも、最期の別れをすることもできないままになっていた。

日本に戻れなくなる懸念

 クレシーニさんは1997年に来日。2014年に永住者の在留資格を得て、現在は大学で教壇に立つ傍ら、ラジオパーソナリティーや執筆、ユーチューバーなどとして幅広く活動している。

 2020年3月26日、父ロン・ラーソンさんが急死したと、母パットさんから連絡を受けた。79歳で、敗血症と肺炎を起こしていたという。

 その頃は、米国など世界各地で新型コロナが猛威を振るっていた。さらに、母の知らせから数日後、日本にいる外国人が再入国許可を受けて出国した場合、永住者の在留資格を持っていても原則として日本ヘの上陸拒否の対象になると、出入国在留管理庁が発表。福岡に生活の基盤を築いたクレシーニさんにとって、現地での感染や日本に戻れなくなるリスクを冒してまで渡米することはできなかった。


クレシーニさんの家族(上段中央)らが2020年4月にZoomで開いたお別れの会

 米国でも外出制限などの措置が取られており、米国内にいる2人の息子さえ顔を見ることもかなわぬまま、ロンさんは火葬された。クレシーニさんらは日米6か所をビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で結んでお別れの会を開き、悲しみを分かち合うことしかできなかった。

葬儀で「ありがとう」を

 その後、日本の水際対策が段階的に緩和されてきたことから、母や兄弟と話し合って2年半越しの葬儀を行うことに。家族や友人ら20人ほどが集まり、納骨もする予定だ。

 ロンさんは、家族と過ごす時間を何より大切にしていた。車で片道12時間かけ、大ファンだった大リーグのセントルイス・カージナルスのスタジアムまで応援に行ったことなど、思い出は尽きない。


アルバムを広げ、ロンさんへの思いを語るクレシーニさん


 「あまりにも時間がたち過ぎたけれど、みんなでそろって『さよなら』を言うのはとても大切なこと。お父さんと過ごしたたくさんの時間に感謝し、『ありがとう』と、それだけを伝えてきたい」とクレシーニさん。これからは、日本を離れたら戻れなくなるのではという不安にとらわれずに済むよう、帰化について考えていくという。



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