明るく、楽しく、激しいバトルを35年 九産大プロレス研究部が記念大会を開催
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福岡の学生プロレスの中心的存在で、多くのプロレスラーを輩出してきた九州産業大学プロレス研究部。創部35周年の節目だった2020年は新型コロナウイルスの影響で多くの試合が延期・中止に。先が見えない中で選手たちはくじけず練習を再開し、3月下旬に念願の記念大会が開催されました。
地域に愛され35周年
研究部は、プロレスがブームだった1985年に研究会としてスタート。同好会などを経て96年、学生プロレスとしては全国でもめずらしい「部」に昇格しました。
80年代には各地の大学で同好会が生まれましたが、ブームが下火になるにつれて数は減っていきます。その中で活動を続けた九産大は、他大学の学生が所属したり、各大学のOBが集う場になったり、福岡の学生プロレスの中心になっていきました。
OB・OGは300人以上を数えるそうです。タレントの松村邦洋さん、プロレスラーの筑前りょう太さんもかつて所属していました。
「プロに負けないプロレス」を掲げ、厳しいトレーニングを積むのが伝統。入部してから1年程度は基礎練習が続き、簡単にリングには上がれません。根本から鍛え直した体力と柔軟性を武器に選手たちが試合で繰り出す技は実に多彩で、多くのファンを獲得してきました。1回の試合で2000人以上の観客を集めたこともあるそうです。
もう一つの特徴は、練習から試合まですべて"自前"ということです。大学の練習場にはOBらが費用を出し合って購入したリングが設置され、プロのレスラーが驚くこともあるそうです。音響や照明機材も備え、その操作や調整も部員たちが行います。
OBによる試合が組まれることもあり、卒業後も変わらぬ絆が伝わってきます。
社会貢献にも力を入れ、児童養護施設へ慰問試合に出向いたり、障害のある人を試合に招待したりしてきました。福岡市・中洲の「中洲まつり」といったイベントにも参加し、会場の盛り上げに一役買っています。
コロナ禍で延期に・・・
35周年の記念大会は本来、2020年秋の学園祭で行う予定でした。しかし、新型コロナで学園祭がオンライン開催となり、事前に収録した無観客試合をYouTubeで公開するだけにとどまりました。
夏頃まで学内に入れず、練習もできませんでした。学生代表の中原大誠さんは「学校にも行けず、青春の一部を奪われた感じでした」と振り返ります。週2回の練習が可能になると、部員たちは「ちょっと前進できた」と懸命に練習に取り組みました。
コーチの西山嘉隆さんは「部をやめずに、よく頑張った。みんな本当にプロレスが好きなんだなと実感しました」と話します。「何とか活躍の場を用意してあげたい」。そんな西山さんたちの計らいで、3月21日の記念大会が実現しました。
思い出の場所で実現
会場は、福岡市・天神の商業施設「イムズ」の9階にあるイムズホール。創部10周年と20周年の記念大会も開いたという思い出の場所です。イムズは2021年夏の閉館が決まっており、感謝の思いも込めた大会になりました。
新型コロナの感染拡大を防ぐため一般の観客を入れることはできませんでしたが、関係者約20人が駆けつけました。会場には、これまでの写真やパンフレット、チャンピオンベルトなどが展示され、OBたちが懐かしそうに見入っていました。
この日は6試合を実施。現役学生の試合だけでなく、OBたちのタッグ戦などもありました。ボディースラムやブレーンバスター、パイルドライバーなどの技が次々と出ると、会場から大きな拍手が起こりました。
メインマッチは、現役のMIYAVIN(3年)とパワ原健斗(2年)によるカード。独特の緊張感の中、互いの意地がぶつかり合う白熱した闘いが繰り広げられました。
試合後、パワ原健斗こと中原さんは「対戦相手と観客がいてはじめてプロレスが成立すると実感しました。自分たちのプロレスを見て、コロナで気持ちが沈んでいる人たちが少しでも元気になってくれたら」と充実した表情で語りました。
観戦した創部メンバーの一人、的野高幸さんは「いい試合を見せてくれた。これから40年、50年と部の歴史をつないでほしい」とエールを送っていました。