幸福の青い自販機 逆転の発想がSNSで話題を呼んだ柳川のカフェ「Sisu」
福岡県柳川市に、ユニークな入り口のカフェがあると聞いた。店に入る扉は見当たらず、自動販売機が置かれているだけ。よく見ると、料金投入口のそばに取っ手がある。ゆっくり引いて開けてみると、中におしゃれなカフェが広がっていた。
西鉄柳川駅から歩いて5分ほど、川下りの発着所からも近い住宅街に2020年6月にオープンした「カフェ&ダイニングSisu」。鍋田賢二さんが店長を務めるカフェが、インスタ映えするスポットとして注目を集めている。
入り口の扉は、中古の自販機を半分に切断した"自家製"だ。カフェのオープンから1年ほどたった頃、店の前に別の飲食店ができ、道路からカフェを見つけにくくなった。「ならば、もっと分かりにくくしてやれ」。こうして、自販機の扉が誕生した。
逆転の発想は当たり、口コミやSNSで「面白い」「かわいい」と話題に。しかし今でも、来店客の半数以上がドアを探して戸惑い、「コンコン」とガラス窓をたたいたり、隣のコインランドリー店から入り口を見つけようとしたりするそうだ。
店内は北欧風のインテリアで、落ち着いた雰囲気。コンセントを備えたカウンターやテーブルなどに18脚が並ぶ。木の質感をそのまま生かし、白を基調とした温かみのある風合いにしたのは、かつてフィンランドを旅して心を動かされた経験からだ。
国連の世界幸福度ランキングで2018年から5年続けて1位になっているフィンランド。暮らし向きは裕福でなくとも、日常の小さなことに幸せを見いだす。「住民の考え方や生き方に魅了され、それが店の内装にも影響しています」と鍋田さんは話す。
店名の「Sisu」は、フィンランドで"不屈の精神"を意味するという。「開店した時期がコロナ禍の真っただ中。負けないぞ、諦めずに頑張るぞ、という覚悟を込めて名付けました」と鍋田さん。一人で慌ただしく店を切り盛りする姿が頼もしく見えた。