ギネス記録の先へ 博多工業高の生徒が挑む「夢のエンジン」

ギネス世界記録に認定された空気エンジンで動く自転車と博多工業高の生徒

記事 INDEX

  • 空気で動くエンジン
  • 自転車で世界最速!
  • 受け継がれる「挑戦」

 福岡市立博多工業高校(福岡市城南区)の生徒たちが、圧縮空気で動くエンジンの実用化に取り組んでいます。排ガスを出さない、環境にもやさしいエンジンで、開発3年目の2020年には、自転車に搭載して世界最速をマークし、ギネス世界記録に認定されました。生徒たちはバイクでの実用化を目標に、エンジンの改良に励んでいます。

空気で動くエンジン

 タンクに貯めた圧縮空気の力で動くエンジン。実用化に取り組んでいるのは自動車工学科の3年生8人です。自動車整備士の資格取得に向けた勉強をしながら、課題研究の一環として週に3時間ほど作業しています。


福岡市城南区の博多工業高校

 プロジェクトがスタートしたのは2018年。ガソリン車が環境に与える影響が問題となる中、ガソリンに頼らないエンジンを作れないかと、当時の3年生が圧縮空気に着目したことから始まりました。


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自転車で世界最速!


空気エンジンを載せた「スーパーカブ50」

 初年度はガソリンエンジンをベースに開発し、ホンダのバイク「スーパーカブ50」に搭載。時速は4.5キロほどでしたが、翌年にはエンジンのバルブを動かす部品を自作するなど工夫を重ね、大幅にスピードを上げることに成功しました。

 3年目には車体をバイクから自転車に替え、ギネス世界記録に挑戦。2020年11月、熊本県のサーキットで計測したところ、空気エンジンを搭載した自転車では世界最速となる時速63.966キロを記録しました。

 初年度から生徒を指導し、ギネス記録達成時に自転車に乗った木戸健人教諭は「動かすことはできると思っていましたが、まさか世界一を目指せるまでになるとは思っていませんでした」と振り返ります。そして、「生徒たちはエンジンが好きで、いつも楽しそうに改良作業に取り組んでいます」と現在の3年生を見守っています。

受け継がれる「挑戦」

 プロジェクトを引き継いでいるのは、記録を樹立したときに1年生だった生徒です。バイクでの実用化に向け、エンジンの一部をコンピューター制御にすることや、圧縮空気を作るコンプレッサーを太陽光で動かすことを目指して活動しているそうです。


バイクでの実用化に向け、改良作業が続く

 コンピューター制御を担当する北川拓磨さんは「普段はできない挑戦です。大げさじゃなくて、生きがいを感じています」と声を弾ませます。

 生徒たちは将来的に、豊田自動織機(愛知県)がもつ自動車での最速記録(時速129.2キロ)への挑戦も考えているといいます。メンバーの佐藤和樹さんは「いつか記録を超えられるようになってほしい。高校生も企業と同じくらい頑張れるところを見せられたら」と"夢のエンジン"を引き継いでいく後輩たちに期待しています。



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