「爆破」でまちおこし 観光やロケ誘致で筑豊ににぎわいを!


記事 INDEX

  • 旧炭都だからできる
  • 「西部警察」に憧れて
  • ”ナダル刑事”も爆走

 ズドン!――。操車場を進む列車のそばで、爆音とともに火炎が広がった。車内から上がる悲鳴と歓声を聞き、仕掛け人の永芳健太さん(51)が「刑事ドラマやバラエティー番組のような撮影と体験ができますよ」と目尻を下げた。かつて炭鉱で栄えた福岡県の筑豊地区。迫力の「爆破」で人を集め、まちおこしを目指す現場を訪ねた。

旧炭都だからできる

 筑豊は福岡県中央部に位置し、緑の山々に囲まれたエリア。石炭産業で活況に沸いたが、炭鉱の衰退・閉山とともに地域のにぎわいは失われていった。


昔から変わらない景色が広がる筑豊地区


 5月中旬、第3セクター・平成筑豊鉄道の金田駅(福智町)に、全国の旅行会社からツアー商品の企画担当者ら40人ほどが集まった。来年行われる観光プロモーション「福岡・大分デスティネーションキャンペーン(DC)」の視察。関係者を前に「駅構内や街なかで迫力の体験ができるのは筑豊だけ」と永芳さんの説明に熱が入る。


小道具の銃器を並べて”迫力体験”の魅力を伝える永芳さん(左)


 永芳さんの本業は映像作家。仲間に声をかけて4年前から、炭鉱施設跡などを舞台に爆破や銃撃戦、カースタントなどのイベントを企画したり、映画やドラマ、CMのロケ誘致に取り組んだりしている。目指すのは、福岡で映画産業を盛り上げることだ。


砂ぼこりを巻き上げて走るパトカー仕様の劇用車


 視察の一行は、パトカー仕様の車が砂ぼこりを上げて走行するカーアクション、火柱のそばを列車で走り抜ける爆破体験を堪能。「刑事ドラマに夢中になった世代ならきっと喜ぶはず」との声が上がった。福岡県で同DC事務局部長を務める宮脇重則さんも「とても面白いコンテンツ。炭鉱関連施設の跡地が生かされ、観光による経済効果も期待できる」と関心を寄せた。


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「西部警察」に憧れて

 飯塚市出身の永芳さんは、渡哲也さんや舘ひろしさんらが出演し、派手な爆破シーンとカースタントで人気を博した刑事ドラマ「西部警察」の大ファン。小学生のときに福岡市で行われたロケにエキストラとして参加し、映像の道を志した。2007年に東京で映像制作会社をおこし、全国の自治体のPR動画などを手がけてきた。


筑豊アクションプロジェクトに取り組む永芳さん


 その一方で、故郷の風景は「西部警察」の世界観にぴったりとの思いを強くし、ロケの適地が多い筑豊地区で撮影環境を整える「筑豊アクションプロジェクト」を2019年に旗揚げした。


気分は刑事ドラマの主役


 プロジェクトには、地元の鉄道会社や病院、花火師、スタントマン、特殊効果の会社などが協力し、仲間が集う。「情熱を感じて一緒にやっている」と語るのは、特殊効果などを手がける新名哲也さん(52)。カーアクションの伊東通敏さん(51)は国際A級ライセンスを持つ二輪レーサーで、「私も西部警察が大好き。運転でお客さんを笑顔にさせられるのが一番楽しい」と話す。


”ナダル刑事”も爆走

 活動当初は、爆破のイベントがテレビ番組などで注目されたが、潮目が変わったのはCM撮影の協力依頼が舞い込んだ2020年春のことだ。

 田川市内の遊休地で撮られたのは、日清食品のカップライス「日清カレーメシ」のCM。刑事ドラマ仕立てのストーリーで、お笑いコンビ・コロコロチキチキペッパーズのナダルさんが熱血刑事「汁無野郎」に扮して商品をアピールした。


「日清カレーメシ『汁無野郎 篇』」のワンシーン(日清食品提供)


 日清食品側が、撮影の候補地を探す中で、永芳さんらの取り組みを知ったそうで、「狙い通りの格好いいCMが完成した」と同社広報は言う。


 今回、旅行関係者の視察を迎えた平成筑豊鉄道。金田駅の広大な操車場は炭鉱で栄えた時代の名残で、かつては石炭を積んだ貨車でいっぱいだった。同社営業企画課長の波多野淳一さんは「眠っている土地を有効活用できる」と観光やロケに期待する。


金田駅の操車場。かつては石炭を積んだ貨車が並んでいた


 永芳さんによると、火薬を使う大規模爆破の撮影や公道でのカーアクションの許可を得るのは国内では難しく、手続きも煩雑だという。


 ハリウッド映画をいつか筑豊で――と思い描く永芳さん。「砂ぼこりが格好良かったり、筑豊の雰囲気がハードボイルドな世界観とマッチしたり。ロケや観光を誘致すれば、まちの発展につながる」と確信する。



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