港の安全を見守り続けて60年 博多ポートタワーが"還暦"に

誕生から60年――。博多湾と福岡市街地を一望できる博多ポートタワーの展望室

記事 INDEX

  • 博多ふ頭のランドマーク
  • 船の安全運航をサポート
  • 節目を祝うイベントも!

 福岡市の博多ふ頭に立つ「博多ポートタワー」が、10月17日に開設60周年を迎えます。港のシンボル的存在で、展望室のほか、船舶が安全に航行できるように情報を提供する無線局が入っています。このタワーの"還暦"を祝うライトアップが12日から始まり、記念イベントも予定されています。

博多ふ頭のランドマーク


赤い外観で夜間も存在感を放つポートタワー

 高さ約100メートルの博多ポートタワーは、赤い鉄骨の外観が特徴です。博多ふ頭のランドマークで、周囲には市営渡船や離島への定期旅客船のターミナル、クルーズ船を受け入れる岸壁などがあります。

 「博多港といえばポートタワーです。船もタワーを目印にして港へやってきます」と、福岡市港湾空港局の添田晃課長は話します。


展望室からの夜景

 地上70メートルには、360度のパノラマが楽しめる無料の展望室があります。20時(最終入場は19時40分)までのぼることができ、添田課長は「家族やカップルに人気のスポットで、サンセットや夜景の時間帯が特におすすめです」と教えてくれました。

 ポートタワーは元々、大浴場やプール、遊具などを備えた民間の娯楽施設「博多パラダイス」の一部として、1964年に開業しました。展望室は当初、全方位の眺望を楽しみながら食事ができる回転式のレストランだったそうです。しかし、博多パラダイスの利用客は次第に減少し、施設はタワーだけを残して閉鎖されました。


1972年の博多ふ頭。タワーは赤と白の2色で塗られていた(福岡市港湾空港局提供)

 75年からは、市が代わってタワーを管理しています。タワーは76年、市の施設「博多港PRセンター」として再オープン。その後、1階部分に博多港ベイサイドミュージアムを設け、博多港の歴史や機能を紹介しています。

 市によると、2017年度は年間約30万人が訪れました。その後、改装工事やコロナ禍による休館を経て21年度に再開し、23年度は約20万人を迎えたそうです。

 設計は、東京タワーや通天閣、別府タワーなどを手がけた建築家・内藤多仲(たちゅう)氏(1886~1970年)によるもので、「タワー6兄弟の末っ子」と呼ばれます。鉄骨を直線的に組み合わせた"無骨"な風貌(ふうぼう)、カクカクした形の展望室が昭和を感じさせます。添田課長は「タワーと一緒に思い出に浸ってください」と話します。


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船の安全運航をサポート

 展望室のさらに上には、一般の人は立ち入れない無線局「博多ポートラジオ」があります。

 ――本船は14時09分にアンカー(いかり)打ちました。どうぞ。
 ――貴船、14時09分にアンカーした。それでは、抜錨(ばつびょう)の際にご連絡お願いします。どうぞ。


無線で船舶とやり取りする中村さん


 海上無線通信士の真田千加子さんが、船からの無線に応答しました。その隣では同僚の中村浩二さんが双眼鏡を手に船の様子を確認しています。

 「港内の動きを船に伝えるのが私たちの仕事です。例えば大型のクルーズ船などが出港する際は、すれ違う船に注意を促します」。リーダーの岡部和美さんが教えてくれました。


「双眼鏡を使って船が着岸できたかを確認します」と岡部さん。窓の奥には中央ふ頭が見える

 博多ポートラジオは1983年に開局。船舶への情報提供を専門に行う東洋信号通信社(横浜市)が運営しています。

 無線は関門海峡や壱岐など半径約70キロ・メートルの範囲に届くそうで、岡部さんたちは博多港を目指す船が到着する3時間前から連絡を取り合います。

 博多港は、旅客船が接岸する博多ふ頭や中央ふ頭のほか、穀物が集まる須崎ふ頭、自動車を輸出する香椎パークポート、建材やガスを扱う東浜ふ頭など計8地区からなる国際拠点港湾です。


24時間、船の安全を見守るタワー

 年間約2万5000隻が入港し、船の大きさや積載物などによって荷降ろしの岸壁が決まります。岡部さんたちは、到着時刻などを聞き取ったり、すでに着岸している先船の荷役が終わるタイミングなどを伝えたりして、各船が港内を安全に移動できるようにサポートしています。

 「人の命にも関わる仕事なので、重責を感じることが多いです」と岡部さん。「船がうまく着岸するのを見届けられたときはほっとします」

節目を祝うイベントも!


ベイサイドプレイス博多と博多ポートタワー

 福岡市は、博多ポートタワーのオープン60周年に合わせて、タワーの歴史や役割、博多港の魅力を広く知ってもらおうと、記念イベントを計画しています。

 10月12日の17時30分からは、タワーに隣接する駐車場でジャズ演奏が行われます。博多湾に沈む夕日とタワーを眺められる会場で、福岡を拠点に活動するミュージシャン4人のライブを無料で楽しめます。


12日に行われるイベントのチラシ

 また、18時頃からは特別ライトアップの点灯カウントダウンがあります。ライトアップ(18~24時)は20日までを予定しています。

 このほか10月12~11月18日は、博多パラダイスに関する資料を紹介し、昭和30~40年代から現在まで港の移り変わりを写真で振り返るパネル展示などを行います。



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