落ちま…せん!! 赤村にある「落ちない岩」が受験生の聖地に
記事 INDEX
- 岩石山の中腹に
- 手前味噌ですが
- 謎は謎のままで
岩と岩の間に挟まれる格好で、落ちそうだけど落ちない――。そんな姿から名付けられた福岡県赤村の「落ちない岩」が、受験生らの間で合格祈願の“聖地”として話題になっている。
岩石山の中腹に
寸法が約2メートル50センチの落ちない岩は、赤村と添田町との境界に位置する岩石(がんじゃく)山(標高454メートル)の中腹にある。村によると、この岩が注目されるようになったのは、平成の終わり頃からだという。
山頂までの歩道が整備され、登山者の目に留まるように。巨岩を下から持ち上げているようなユーモラスなポーズで撮った写真がSNSなどで広がった。
岩石山は、英彦山の修験道の流れをくみ、鎌倉時代の頃から山伏の修行の場として知られてきた。山の歴史的な背景もあり、「なんだかご利益がありそう」と受験生らがこの岩に注目するようになったらしい。
地元では、落ちない岩の"パワー"は早くから知られていたようだ。村の中心部にある赤中学校ではコロナ禍の前まで、受験を控えた3年生全員が山に登って祈願していたという。
手前味噌ですが
岩からしばらく登ったところにある休憩所には、登山者が書き込むノートとペンが置かれている。ページをめくると、「3学年全員進路実現!」「子どもが合格しますように!!」といった"願い事"が残されていた。
果たして効果のほどは――。村の広報を担当する森喬紀(たかのり)さん(27)に聞いた。「手前味噌(みそ)にはなりますが……」と、ちょっと恥ずかしそうに教えてくれたのは、3年ほど前の森さん自身の体験だった。
当時、就職活動に励んでいた森さん。第1志望だった赤村役場の最終面接までこぎ着け、面接当日の朝、願掛けのために早起きして、落ちない岩に向かった。山の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込み、岩に両手を置いて、赤村との縁を願ったという。
謎は謎のままで
SNSでは「地震が起きたら落ちるかも」といった投稿も見られる落ちない岩。一体どのようにして、現在の状況が生まれたのだろうか。地域の人たちに聞いてみた。
返ってくるのは「分からない」という答え。山の上から落ちてきて岩の間にはまり込んだのか、長い年月をかけて周囲の土が流出して今の姿になったのか、それとも噴火で石が飛んできたのか――。地元でも意見が分かれるようだ。
とはいえ、謎は謎のままの方が、想像を膨らませることができて楽しい。あれこれと考えているうちに、山里を一望できる崖の上にたどり着いた。そこにはベンチ代わりのビールケースが二つ。腰を下ろしてほっと一息ついていると、ニワトリの鳴き声が遠くに聞こえた。