現状は?長続きの秘訣は? 子ども食堂に携わる人たちに聞いてみた

 子どもに食事を提供し、地域の交流の場にもなる「子ども食堂」。10年ほど前から多くのメディアに登場し、子どもたちを支える活動は全国各地に広がりました。現在の取り組みはどうなっているのでしょうか? 福岡市で関係者を訪ねました。


advertisement

子ども食堂へ行ってみた

 福岡市早良区四箇の「風ひかり作業所」で、月に2回運営されている「さわら子ども食堂」へ足を運びました。運営の中心にいるのは、NPO法人「さわら子どもひろば」理事長の山内恵美子さんです。


さわら子ども食堂の看板と山内さん

 2016年、拠点もノウハウもない中で、知人同士の声かけから活動をスタート。子どもたちのことを思う住民らが一人、また一人と集まり、今では常時15人ほどのボランティアスタッフを確保できているといいます。


施設の屋外で行われた食料配布の様子

 訪ねた日は、フードバンク福岡などから寄せられた食材のほか、子ども食堂で購入したパンやお菓子が配布されました。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、みんなで一緒に食事をとることは控えているそうです。

 コロナ禍の前に比べ、1回の参加者は約3倍の100人規模に増えました。食料の配布に切り替えたことで、参加のハードルが低くなったことのほかに、新型コロナの影響による家庭の収入減も背景にあるのではないか――と山内さんは考えます。


配布された食料の一部

 印象的だったのは、訪れた子どもたちに対面で尋ねるアンケート。今後の参考にする意図もあるそうですが、「子どものささやかな声や主張を受け止めたい」と山内さん。「人とのつながりやコミュニケーションの中で子どもは育つから」と話します。

 開催を告知するチラシには毎回、「余剰食材等はいつでも秘密厳守でお分けできます」の一文を入れています。実際に連絡を受けることも少なくないそうです。


配布している手作りチラシ

 山内さんに活動を続ける秘訣を聞きました。「子ども食堂の終了時、毎回どんなに疲れていても、良かった点、悪かった点、印象に残った子どもの言葉などをスタッフ全員で振り返ります。話し合いが必要なら、みんなで解決策を探します」

 同じ思いを持つ人たちがお互いを認め、課題を共有し、改善策を一緒に探るという営みの繰り返しが、「次」への原動力になっているのかもしれないと感じました。


advertisement

社会福祉協議会の活動は?

 子ども食堂の運営に特別な資格などは必要ありません。保健所に「子ども食堂開設報告書」を出し、衛生面の助言・指導を受ければ開けます。福岡市社会福祉協議会地域福祉部で地域福祉課長を務める馬男木幸子さんによると、高齢者支援に関するものばかりでなく、子ども食堂についての相談も多いそうです。


福岡市社会福祉協議会がある「ふくふくプラザ」

 2010年代の初め、子ども食堂が一気に広がる中で、馬男木さんら社協のスタッフは危機感も抱いていたといいます。「誰でも始められる間口の広さと話題性から、営利目的で参入する団体があるのではないかとの懸念がありました」。福岡市でも任意団体やNPO、飲食店が次々と活動を始め、一時は把握が追いつかなかったそうです。

 「本当に貧困を抱えている子は、真っ先に子ども食堂へ行こうとはしません。ほかの子が楽しそうに遊んでいて、服装や家庭について根ほり葉ほり聞かれないなど、自分にとって安全・安心な居場所だと思えたら来てくれるようになります」と馬男木さん。必要な人に支援が届くまでには時間を要します。


福岡市社協公式サイト「地域の子どもプロジェクト」のページ

 福岡市社会福祉協議会は「地域の子どもプロジェクト」として、子ども食堂の支援、子どもの居場所づくり、関係者のネットワークづくりなどに取り組んでいます。

 馬男木さんは「"子どもたちの役に立っている"という実感も、活動を継続する上で必要です」と、大人たちのモチベーションの重要性も教えてくれました。


advertisement

行政も資金面などで支援

 福岡市こども未来局では「子どもの食と居場所づくり支援事業」を進めています。食事の提供、遊びや学びの機会といった居場所づくりに取り組む団体に対する助成で、2016年から35団体を支援してきました。

 助成を受ければ経費の自己負担を軽減でき、保健所から食品衛生上の指導も受けられます。同局こども部企画課の担当者は「子どもを取り巻く環境はさまざま。スタートアップを応援し、活動に取り組む団体を増やすことも目下の課題」と話します。


福岡市公式サイト「子どもの食と居場所づくり支援事業」のページ

 厚生労働省の国民生活基礎調査の概況によると、子どもの貧困率は13.5%(2018年)と、7人に1人が貧困状態にあります。子ども食堂の取り組みを一過性のものにせず、住民一人ひとりが地域の活動に関心を向けることが大切だと改めて思いました。


advertisement

この記事をシェアする