「命を守るヘルメット」寄贈 直方の自転車店主が市教委に
福岡県直方市須崎町でスポーツバイク専門店を営む薗田裕之さん(57)が、自転車通学用のヘルメット9個を市教委に寄贈した。4月の改正道交法施行で着用が努力義務化されたヘルメットは、全国的に品薄や価格高騰が続いており、薗田さんは「大切な命を守るヘルメット。欲しくても手に入れられない子供たちに届けたい」と願う。
「必要な子に届けたい」
薗田さんは3代続く老舗自転車店の店主で、現在はスポーツバイクを専門に扱う。大学卒業後、静岡市の有名自転車店に勤めた経歴を持ち、トライアスロンやロードレースのトップ選手らとも交流。家業を引き継いだ後は、地元で県内初となる公道でのロードレース大会や、小学生らを対象とした自転車教室を開催し、自転車の魅力を伝える活動にも取り組んでいる。
ヘルメットの寄贈を思い立ったのは今年初め頃。店を訪れた高校生数人のうち、一人だけ「ママチャリ」に乗ってきた男子生徒に話しかけたのがきっかけだった。スポーツバイクの購入を勧めると、ママチャリは友人からの“お下がり”で、中学時代からヘルメットが買えず、「自転車通学を諦めて徒歩で通学している」と打ち明けられたという。
薗田さんによると、ヘルメットは4月以降、全国的に品薄となり、店頭の在庫も以前の半分以下。仕入れ値は10年前の2倍近くに跳ね上がった。男子生徒の話を聞いて「同じ境遇の子がいないだろうか」と不安に駆られ、店内にあった通学用ヘルメット9個を、地元の子供たちに使ってもらおうと決意した。
薗田さんは「様々な事情でヘルメットが子供たちに十分に行き渡っていないのが現状。着用率アップに向け、業界としてもしっかり啓発していきたい」と話している。市教委によると、寄贈されたヘルメットは直方第二中学校に届け、活用法を検討していくという。