【長崎】「五島うどん課」誕生! 新上五島町がPRに本腰

 長崎県・五島列島にある新上五島町が今秋、特産の「五島うどん」の振興を目指すため、「五島うどん課」を新設した。特産品名を冠した自治体の部署は全国的にも珍しいといい、担当者は「香川の讃岐うどん、秋田の稲庭うどんと肩を並べるようなブランドにしていきたい」と意気込む。

細麺ながらコシ 「博多うどん」とは対照的

 11月中旬、長崎市の長崎スタジアムシティに「うどんの里 新上五島」と書かれたのぼりがはためいた。町立有川中の全校生徒91人が来場客らに五島うどんの乾麺が入った袋を手渡していた。1年の生徒(13)は「新上五島にこれだけおいしいものがあるということをもっと多くの人に知ってもらいたい」と話した。


「五島うどん課」の看板を掲げる職員ら(新上五島町役場で)


 生徒たちによる配布イベントを仕掛けたのは、五島うどん課の職員たちだ。島外に出向く校外学習にあわせて、PRしてもらおうと初めて企画した。


 五島うどんは細麺ながらコシがあり、太くて軟らかい「博多うどん」とは対照的だ。麺同士がくっつかないように地元特産の食用ツバキ油を使い、手延べで作られる。

存続の懸念

 地元では、鍋から麺を直接すくって食べる「地獄炊き」が一般的だ。定番のつけだれは2種類ある。干したトビウオから取った「アゴだし」は上品な味わいが楽しめ、生卵にしょうゆをたらす食べ方は濃厚な味が人気という。


五島うどんの「地獄炊き」

 そんな五島うどんだが、近年は職人の高齢化や後継者不足で町内の事業者が減り、存続が懸念されている。7年前は33業者が製麺・販売を担っていたが、現在は25に減った。

 創業約50年の「ますだ製麺」は島で取れたトマトやアゴの粉末を用いたカラフルな麺も生産し、需要を増やしている。しかし、お盆や年末年始などの繁忙期には人手不足が原因で、供給が追いつかず、やむなく納入を断ることもあるという。

 3代目社長の舛田好伸さんは「製造機械のメンテナンスが追いつかなかったり、後継ぎがいなかったりして、廃業を検討する人もいる。町全体で質の良いうどんを作っていく必要がある」と語る。

生産拡大へ

 こうした中、10月に設置されたのが五島うどん課だ。町は生産の拡大を目指し、業者への支援を強化する。新たな担い手の希望者と事業者を結び付ける「事業承継」を推進。業務効率化に向けたデジタル技術の導入や、安定的な供給につなげるために共同で使える倉庫の設置も検討している。

 県外での販売促進にも力を入れる。高松市で12月7、8日に行われた「全国ご当地うどんサミット」にも初めて出展し、手頃な価格でうどんを振る舞った。2日間で計約700食が売れたという。うどん通の香川県民からの評判も上々で、他県の製麺事業者とも後継者不足などの課題について意見交換した。参加した同課の担当者は「五島うどんの需要は強く、生産が追いつけば、もっと拡大していける」と手応えをつかんだ。

 町内25業者の出荷額から算出した五島うどんの年間の売り上げは2023年度が約14億8000万円だった。町はブランドを確立させ、20億円まで引き上げることを目標に掲げる。

 五島うどん課は当面、観光商工課の職員10人が兼務する形となるが、いずれは専任の職員を配置したい考えだ。両課の課長を務める近藤聡さんは「五島うどんを若い人たちに知ってもらい、しっかり存続できるように尽力したい」と語った。


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