相次ぐ詐欺被害への対策として、熊本県警が新たなマスコットキャラクター・ワルモンを生み出した。容姿が似ている県のPRキャラクター・くまモンは「親戚でも友人でもない」と否定するが、初披露のステージにはそろって登場。イベントでの寸劇で、ワルモンは詐欺師としての視点で手口を語り、県警マスコット・ゆっぴーらが被害に遭わないように訴えた。
詐欺被害防止へ寸劇で手口を紹介
ワルモンは「悪者」を意味する熊本弁から名付けられた。好きな食べ物は冷めたイカ(イカ冷まし=いかさま師)、嫌いな飲み物は球磨焼酎のロック(球磨ロック=熊が捕まる)だ。県内各地で様々な詐欺の手口を自慢げに披露する癖がある。誕生日の敬老の日(9月15日)に熊本市中心部で開かれたイベントで初めて姿を見せた。
「入ってる金ば全部おろして警察に見せたらよかとかな」――。口座が犯罪に使われているという電話に高齢者がだまされる寸劇だ。
現金の受け取り役のワルモンが現れると、ゆっぴーが逮捕して被害を防いだ。使われた手口は「ニセ警察かったり」と紹介され、県内を中心に活動するタレントの英太郎さんが「固定電話での被害が多いので気をつけてくださいね」と高齢者らに呼びかけた。
イベントでは祖父母向けの手紙を書くブースも設置された。菊陽町立菊陽北小4年の児童は祖父母に「電話でお金の話が出たら詐欺だよ」との手紙を書き、「ワルモンは意外とかわいかった」と話した。
「うまい話の裏には必ずヤツが…」
県警によると、1~8月の特殊詐欺の認知件数は145件(前年同期比90件増)で、被害総額は約6億6200万円(同約3億8900万円増)に上る。被害者の半数が65歳以上の高齢者だったという。最も多い手口は、警察官や検察官らを名乗る「オレオレ詐欺」で、6割を占める。
最近は電話で「逮捕した犯人があなたに金を渡したと言っている。口座内の金を調査する」などとかたり、SNSのテレビ電話に誘導。その後は引き出した現金を紙袋に入れて家の外に置くよう指示して持ち去ることで、被害者と会わずにだまし取るケースが目立っている。
中には、被害者に「これは秘密調査。家族に話せば秘密漏えい罪になる」と家族らに相談させないように脅し、定期的なテレビ電話で周囲に第三者がいないか確認したりする事例もある。
県警は「うまい話の裏には必ず『ワルモン』がいる。官公庁からの電話であれば、一度電話を切ってかけ直して確認してほしい」としている。