【長崎】日本初のビール復活! 平戸オランダ商館に資料
江戸時代初期、東アジアにおけるオランダの貿易拠点だった平戸オランダ商館(長崎県平戸市)で醸造され、日本で初めて造られたとみられるビールが、約400年ぶりに復活した。商館の資料から、黒砂糖などを使って館内で製造されていた史実が明らかになり、平戸市の博物館が商品化に挑んだ。地元では、新たな特産品を通じて“日本のビール発祥の地”をアピールしている。
400年前、ロマンの味
平戸港の北側にある国史跡「平戸和蘭(おらんだ)商館跡」。跡地には、美しいしっくいの壁が印象的な商館倉庫が復元され、2011年に市の歴史博物館「平戸オランダ商館」としてオープンした。館内の冷蔵ケースには、瓶詰のビールが並んでいた。
「日本人が初めて知ったビールの味だと思うと、ロマンを感じませんか」。博物館の岡山芳治館長が、グラスに注いだ黄金色のビールを感慨深そうに見つめた。
博物館によると、1636~40年の商館の会計帳簿には、「カンボジア産茶褐色砂糖1400斤の総額にして、当商館においてビール醸造やその他の用途に保管されたるもの」などと、館内でビールを醸造するために黒砂糖を度々輸入したことが記されている。
商館倉庫の備品リストには、「鉄製の醸造釜」も入っており、国内でのビール醸造を示す記録では最も古いという。平戸藩から小麦を購入した記録もあることから、小麦をベースにして黒砂糖を加え、ビールの保存や運搬に使われていたオーク(ナラ)の樽(たる)で醸造していたとみられる。
「発祥の地」をアピール
ビールの醸造については、江戸時代に出島(長崎市)で行われていたことが流布しているが、平戸が先行していた史実はあまり知られていない。そのため、博物館は「平戸が発祥の地であることをアピールしよう」とビールの再現を企画した。オランダ大使館員の紹介で、1年ほど前に徳島県神山町の醸造所に相談。当時のオランダでの醸造方法を調べてもらい、製造を委託した。
原料は小麦と黒糖などのほか、香り付けにオークチップを使用。当時のオランダ人に親しまれたビールを参考にしてアルコール度数は4%に抑えた。「REVIVAL HIRADO 1636」と名付けて昨年12月に販売を開始。1瓶330ミリ・リットル、税込み990円で、酒税法上は発泡酒となる。
<平戸オランダ商館> 1609年、現在の平戸市に設置されたオランダ東インド会社の支店。商館を通じて、主に中国や東南アジアから反物類などが輸入され、日本からは大量の銀などが海外に流出した。キリスト教の禁教下、商館倉庫にキリスト生誕にちなむ西暦の年号が記されているとして幕府が破壊を命じ、41年に出島に移転された。