【大分】「進撃の巨人」経済効果は推計54億円 日田市
人気漫画「進撃の巨人」にあやかった地域おこしが活発な大分県日田市で、関連商品の売り上げを含む経済波及効果が2022年8月までの1年8か月で約54億円に上るとの推計を地元のITコンサルタント会社がまとめた。市は小規模事業者の商品開発を後押しし、波及効果の一層の拡大を図る考えだ。
「進撃の日田」と銘打った一連のプロジェクトは、有志でつくるまちおこし会議が20年11月、作者・諫山創さんの出身地、同市大山町にある大山ダム直下の公園に主人公らの銅像を建てたのが始まり。
21年3月にはJR日田駅前に別の銅像を置いたほか、大山町の道の駅にミュージアムを開設。まちおこし会議は22年2月、関連商品を扱う事業者などを巻き込む形で協議会へと発展した。
波及効果は事務局を務める「ティーアンドエスおおいた」のグループ会社が推計した。「聖地」巡りで日田を訪れたファンらが21年1月から22年8月までの間、移動や食事、宿泊、関連商品の購入などに充てた費用を計約54億円とはじき出した。
カメラをかざすとキャラクターが現れるスマートフォンのAR(拡張現実)アプリやスタンプラリーの利用回数、ミュージアムの入場者数などを積算の根拠にしたという。費目ごとの金額などは明らかにしていない。
協議会の担当者は「22年9月以降もミュージアムの入場者数などは順調に伸びている。今後は『進撃の巨人』はもちろん、日田そのものの魅力をアピールする取り組みにも力を注ぎたい」と意気込む。
低い著作権料 商品開発後押し
日田市の事業者にとって、商品開発のネックとなりがちな著作権料が低く抑えられているのは魅力的だ。
市は「具体的な金額は言えない」(商工労政課)としているが、数十万円が相場とされる著作権料の下限がかなりの低額に設定されたことで参入を促す環境が整った。市内の事業者が日田の産品を使って開発することなどが条件で、「地元に恩返しがしたい」という諫山さんの意向をくんで著作権を持つ講談社が特別に認めたのだという。
市は一定の条件を満たした小規模事業者を対象に、10万円を上限に著作権料を補助している。22年度までに19事業者がラムネやパスタ、壁掛けなどの商品化にこぎつけた。
市が5月31日に開いた説明会に参加した製造業の男性(58)は「『進撃の巨人』は日田にとって大事なコンテンツ。差別化の武器にもなる。海外も視野に新商品の開発に生かしたい」と話していた。