【熊本】阿蘇・滝室坂トンネルが貫通 中九州道の一部

 熊本市から大分市までを結ぶ自動車専用道路・中九州横断道路の一部、熊本県阿蘇市の滝室坂トンネル(仮称、約4.8キロ)が貫通し、現地で式典が行われた。2012年7月の九州北部豪雨の被害で国道が長期間通行止めになった教訓から求められた「安心・安全な道」は、事業化から約10年を経て、一つの節目を迎えた。


貫通を祝う式典で万歳をする出席者ら

九州北部豪雨を教訓に「安心・安全な道」

 国土交通省九州地方整備局によると、中九州横断道路は国の直轄事業で総延長約120キロ。全て開通すると、熊本・大分両市間の移動は、従来より約1時間半短縮される。

 滝室坂トンネルは、中九州横断道路の一部で、阿蘇市の一の宮町坂梨と波野小地野の両地区を結ぶ。江戸時代の参勤交代行列も通った地域で、昔から交通の難所として知られる。現在の主要道・国道57号も険しい山間部を通るため急カーブが多く、安全のため、連続雨量が170ミリ以上になると交通規制がかかる。

 12年の九州北部豪雨では、国道57号が大規模な土砂崩れで約40日間にわたって通行止めになり、物資の運搬や救援活動に影響が出た。災害に強い安全な道路が求められ、同省は翌13年にトンネルを含む滝室坂道路を事業化。18年に着工した。

 九地整熊本河川国道事務所によると、阿蘇山の性質の違う堆積(たいせき)物が層をなす複雑な地質に加え、標高差が約200メートルあるなど難工事だったという。最新技術を駆使して慎重に掘り進め、約5年で貫通にこぎ着けた。トンネルの事業費は約350億円。

 6月18日の式典には、工事関係者や地元住民ら約300人が出席。発破スイッチを押して貫通を確認した。蒲島郁夫知事は「教訓を踏まえ、災害に強い道路ネットワークの構築が必要だった。この貫通は本県にとって大きな希望となる」とメッセージを寄せた。

 同事務所によると、今後、トンネル本体の舗装や照明などの残工事を来春には終える予定。ただ、車両通行が可能になる開通時期は未定としている。


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