【熊本】ウッチャン、映画「夏空ダンス」への思いを語る
九州豪雨で被災した熊本県・人吉球磨地域を舞台にした映画「夏空ダンス」の6月24日の地元公開を前に、監督・脚本を務めた人吉市出身のタレント内村光良さん(58)が読売新聞のインタビューに応じた。内村さんは「水害はいたるところで起こっている。全国の人に見てもらい、何かを感じ取ってほしい」と思いを語った。(聞き手・山之内大空)
地元公開前に人吉でインタビュー
人吉市では、豪雨で中心市街地が広範囲で浸水し、災害関連死を含む21人が亡くなった。インタビューは6月14日、市内で行われ、内村さんは「町が水没している映像はショックで、知らない町を見ているようだった」と振り返った。直後は自身も含めて復旧で手いっぱいだったが、時間の経過とともに変わっていく街の風景を残したいとの思いが募ったという。
ヒロインには、テレビ番組で出会ったダンスチームのメンバー・島雄こなつさんを抜てきした。「とてもダンスがうまく、この子が地元で踊ったら絵になると思って脚本を書いた。高校時代まで過ごした場所で青春映画を撮りたいという考えともかみ合った」と語る。
街の風景 残したい
青井阿蘇神社や球磨川、仮設商店街に街を見下ろす村山公園――。作品の核といえるダンスシーンには、地元の人々になじみ深い場所が数多く登場する。花火大会のシーンでは、エキストラとして多くの地元住民が参加した。「みんなが思い思いの浴衣を着て参加してくれたし、30年ぶりに再会した同級生もいた。自分が慣れ親しんだ場所で撮影できて良かったし、ありがたかった」という。
一方、遮断機がいまだに倒れたままの線路や空き地が目立つ中心市街地、店舗を失ったラーメン店の店主など、豪雨災害の現実にもカメラを向けた。「あまりに悲惨なものになるとドキュメンタリーになる」と説明し、風景を中心にぎりぎりのところで表現するように苦心したという。
豪雨からまもなく3年となる。「帰るたびに地元の景色が変わっていてうれしい。できることをやり、立て直している皆さんはすばらしいと思う」と内村さん。「急に道が開けるものではない。目の前のできることをやっていくことが大事だというメッセージを込めた。多くの人に見てもらいたい」と呼びかけた。
「くまもと復興映画祭」人吉で6月24日
映画の力で熊本の復興を支援する、くまもと復興映画祭が6月24日、人吉市カルチャーパレスで開かれる。
熊本地震の翌年に始まり、今回で7回目。「球磨川特別編」として昨年に続き、九州豪雨の被災地で行われる。熊本市出身の映画監督、行定勲さんがディレクターを務める。
会場では、内村光良さんの「夏空ダンス」や「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」(内田英治・片山慎三監督)など5作品が上映される。
全席指定。全作品を鑑賞できる1日券は完売。1作品のみ見られる作品券は1000円(夏空ダンスは完売)。問い合わせはメールへ。
「夏空ダンス」
内村光良監督4作目の短編作品。ダンスの映像作品を撮影する人吉の高校ダンス部を舞台に、ダンサーへの夢を抱く女子高生・川辺夏子の青春を描く。内村さんは市役所に勤める夏子の父親役として出演している。
6月30日からは熊本、佐賀、福岡の3県の映画館で2週間限定で公開され、その後、全国上映が予定されている。