【鹿児島】駆除ヤクシカで革小物を製作 屋久島の工房
鹿児島県・屋久島で有害鳥獣として駆除されたヤクシカを生かそうと、同島で工房を営む清水舞さん(44)が、ヤクシカの革を使った財布や名刺入れなどを製作している。5月18日には、東京で開かれるイベントに初めて出店する予定で、「革製品を通して屋久島の自然の恵みを感じてもらいたい」と話す。
同島の宮之浦港近くの工房「ariga-to」。革製品のにおいが漂う室内には、色とりどりの財布や名刺入れ、コインケースなどが並ぶ。店名には「命への感謝を紡いでいく」との思いが込められている。
清水さんは2013年に京都から移住した。当初はダイビングのガイドとして働いていたが、間もなく首のヘルニアを患った。同じ頃、ジビエを扱う食肉加工センターが島内に完成。廃棄されるヤクシカの皮を生かせないかと、センター側から趣味でレザークラフトを楽しむ清水さんに声がかかった。16年に自宅の玄関を改装して販売を始め、20年に今の工房を開いた。
県自然保護課によると、ヤクシカは島内に1万~1万6000頭が生息すると推定される。タンカンなどの農作物や希少植物への食害が深刻化しており、環境省や町などが年間2200頭前後を駆除している。
清水さんによると、ヤクシカの革は牛革よりも脂分が多く、柔らかくてしなやかなのが特徴。手の脂も染みこみやすく、使っているうちに風合いが変化するのも魅力だという。
繁殖期にメスを巡ってオス同士がけんかして付いたとみられる傷も、あえて一頭一頭の個性を感じてもらうため、デザインとして生かす。商品はすべて清水さんらスタッフが手縫いしており、ボタンなどにヤクシカの角や夜光貝を使ったものもある。加工時に残った革もイヤリングなどの小物に使用し、材料を使い切ることを心がけているという。
東京のイベントに初出店
18日には、東京ビッグサイト(東京)で開催されるアジア最大級のアートイベント「デザインフェスタ」に初めて出店する。清水さんは「屋久島の自然の恵みを無駄にせず、長く使ってもらえる製品を作っていきたい」と話す。
営業は午前10時~午後6時。火、水曜定休。コインケースなどのクラフト体験もできる。問い合わせは、清水さん(080ー5309ー5213)へ。