【鹿児島】鹿銀の決済アプリ「Payどん」がどんどん成長中

 鹿児島銀行が独自開発したスマートフォン用決済アプリ「Payどん」の2025年度の決済額が、100億円を超えたことが分かった。サービス開始から7年目での達成で、地方金融機関の決済アプリでは全国で最大規模とみられる。スマホ決済は大手への集約が進んで撤退も相次ぐ中、異質の「ローカルプラットフォーマー」になろうとしている。


鹿児島県内で浸透している決済アプリ「Payどん」


地方金融機関で最大規模に!

 19年度にサービスを開始したPayどんは地元加盟店など1万2000か所以上で使えるアプリで、25年度の決済額は前年度比約2割増の105億円だった。コロナ禍の消費刺激策として鹿児島県内の自治体がPayどんでプレミアム付き電子商品券を発行した期間に決済額と利用者数が押し上げられたが、その後も伸びているのが特徴だ。

 決済額は地方独自の決済アプリの中で際立っており、成功例と言われる飛騨信用組合(岐阜県高山市)の「さるぼぼコイン」でも、17年12月から約8年間の累計で156億円。北国銀行(金沢市)が24年に始めた「トチツーカ」も、26年2月の決済額は1億円超という規模だ。

加盟店重視!ライバルと連携

 スマホ決済アプリは競争が激しく、全国的には決済額が年10兆円を大きく超える「PayPay(ペイペイ)」など、一部の通信やIT大手のサービスへと集約が進んでいる。一方で利用者に浸透せずに撤退する動きも出ており、25年12月には、ゆうちょ銀行や福岡、十八親和、横浜、広島銀行などが26年中にサービスを終えると発表した。ある地銀関係者は「ペイペイとの差別化が難しかった」と話す。

 厳しい環境でもPayどんが成長しているのは、加盟店のメリットを重視した鹿児島銀の姿勢と、ライバル金融機関との連携が奏功しているためだ。



 加盟店が決済額に応じて同行に支払う手数料は1.5%と、1.60%以上に設定するペイペイも下回る業界最安水準に抑えている。店側が売上金を出金できるのも最短で翌営業日と、数日かかることがある大手アプリと差別化して中小・零細企業でも導入しやすくした。

 さらに、南日本銀行や鹿児島相互信用金庫、鹿児島信用金庫と24年までに順次連携したことで、他地域では見られない地元の主要金融機関による共通基盤となった。アプリのロゴにデザインしていた鹿児島銀キャラクター「しろどん」は外し、「鹿児島のキャッシュレスアプリ」へと衣替えした。参加した3金融機関にとっても、自ら開拓した加盟店で決済されれば手数料の一部が収入になるメリットがあり、各金融機関の営業により、加盟店と利用者の開拓に弾みがついた。

さらなる進化で広がる可能性

 地銀らしい地元密着と独自開発による柔軟な対応で生まれたサービスもある。鹿児島市の商業施設「オプシアミスミ」は24年、Payどんで施設独自の電子商品券の販売を始めた。それまでは紙の商品券だったが、発売日の販売対応や、店舗で使われた後の商品券の回収と集計の事務負担が大きかった。この悩み事を鹿児島銀に相談したところ、アプリでの発行を提案された。

 施設を運営するMisumiの村脇あづみ担当マネジャーは「紙の発行では従業員が疲弊するほど負担が大きかったが、電子化で一瞬で作業が済むようになり、圧倒的に効率化された。導入のメリットは大きかった」とし、今後も継続利用する方針だ。同様の仕組みは他の企業にも広がっているほか、独自開発の柔軟性を生かして商品券の抽選販売や来店スタンプカード機能、ポイント還元など多様な機能の追加やキャンペーンを機動的に展開し、決済額の増加につながっている。

 鹿児島銀は26年度の決済額を120億円超と見込んでいる。有川隆治・デジタル統括部主任調査役は「一定の規模になったことで利用者の属性や決済額などのデータを活用したマーケティング支援などの可能性も広がる」と、さらなる進化を目指す。



地方のモデルケースに


宮居雅宣代表

 業界に詳しい決済サービスコンサルティングの宮居雅宣代表は「決済サービスは、24時間どこで誰が使っても正常に処理することが必要で、金融機関であっても運営は簡単ではない。お金を扱う以上、不正や不具合への対策が常に必要だ。そのコスト負担は重く、一般的には規模が大きい方が有利となり、大手に集約されやすいサービスといえる。その中にあり、Payどんのように地方でこれほど普及に成功している例はほかにないだろう」と指摘する。
 その上で、成功した要因については4金融機関の連携を挙げる。「決済サービスはどこでも使えることが重要だが、地域の金融界全体で取り組む共通の基盤となったことで、鹿児島県内で広く使えるサービスになり、利便性が向上した。利用者だけでなく、事業者、自治体を含めた地域全体のデジタル化への貢献も大きい。人口減少が進む中、生産性の向上にもつながる取り組みで、地方のモデルケースになる事例だ」と分析している。


地域活性化のツール


碇山浩美頭取

 鹿児島銀の碇山浩美頭取に、手応えを聞いた。
 「決済サービスは大手が強く、当初は心配しながらスタートした。そもそも決済手数料でもうけようという考えはなく、独自の経済圏をつくることや、事業者のデジタル化を支援する目的が強かった。それでも決済額が想定を上回り、採算性も上がってきている。様々なサービスの起点になるデジタルツールとして使い道が広がっており、ふるさと納税などでの活用も考えている。地域を活性化するために使っていきたい」


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