福岡市民にフラワー体験を 一人一花運動アンバサダー石原和幸さん
記事 INDEX
- 花がある日常は生活がより豊かに
- コロナ禍の苦境をチャンスに変える
- 環境に優しい福岡市に
英国「チェルシーフラワーショー」で合計11個のゴールドメダルを獲得し、「緑の魔術師」とも称される庭園デザイナー・石原和幸さん。昨年、福岡市の「一人一花運動」のアンバサダーに就任しました。収束が見えないコロナ禍にあって、花や植物が社会や生活にもたらす可能性について発信しています。
石原和幸さん
長崎市生まれ。22歳で池坊に入門し、長崎市で生花店「風花」を創業。2008年に造園設計事務所「石原和幸デザイン研究所」を設立。英国「チェルシーフラワーショー」には14回出展し、11個のゴールドメダルを獲得している。
花がある日常は生活がより豊かに
――昨年、福岡市の「一人一花運動」のアンバサダーに就任しました。
これまで多くの福岡市内の企業と一緒に仕事をしてきました。2016年には西鉄グランドホテルに生花店「GIVERNY(ジベルニー)」をオープンしました。店名は画家クロード・モネが愛した庭園があるフランスの村にちなみます。そういった経緯もあって、福岡市に声をかけていただきました。
――福岡市は大濠公園もあり、緑が近い気がしますが。
福岡県は花の生産が盛んで、出荷量は全国トップクラスです。ただ、世帯あたりの消費額で見ると下から数えた方が早いです。(編集部注:農林水産省作物統計調査で福岡県は2019年産出荷量「切り花類」が全国3位、総務省家計調査の2019年世帯あたり支出「切り花」で福岡市は47都道府県庁所在地で46番目)
花は高価で手入れが面倒なイメージがあり、購入する習慣が根付いているとは言えません。花屋で100円で買ってきた花でも意外に長持ちしますよ。水を注いだグラスに生けるだけで、食卓の印象ががらっと変わります。
――私自身、最近は自粛生活で自然に触れる機会が減りました。
オランダ・アムステルダムのレストランでの体験です。テーブルの準備をしていた店員が、一輪挿しのチューリップをさりげなく入れ替えました。当たり前の作業のリズムに、花を飾ることがきちんと染み付いていて感動しました。
何げないことですが、テーブルに花が「ある」と「ない」とでは、食事の体験が異なってきます。花がある日常は、生活をより豊かにしてくれます。
コロナ禍の苦境をチャンスに変える
――コロナ禍で花農家の苦境が伝えられています。
コロナ禍で結婚式が減り、葬儀が小規模化していることが大きな要因でしょう。個人消費では母の日のギフトが落ち込みました。母の日は普段の10倍くらい花が売れます。ただ、短期間に集中する消費は、ひずみも生みます。
消費の山谷をなくし、日常生活に植物や花を取り入れたくなる情報発信が、売る側に求められています。外出が減り、衝動買いの需要も減っています。「オンラインで花の魅力を発信する」。コロナ禍の一人一花運動のキーワードになりますね。
――コロナ禍でネット通販を利用する機会は以前より増えました。
妻はネット通販のサブスクリプション(定額制)で花を毎月購入しています。私のお店から買ってくれたらいいのにね。でも、そういう需要があるんだなということですよね。
コロナ禍でも家庭用ゲーム機や家電など、販売が好調な分野はあります。コロナ禍によって10年先の未来が早送りでやってきただけで、デジタル化を駆使して情報を発信している業種は伸びています。
デジタル化で便利になった社会に、植物や花がある暮らしはより求められると思っています。社会が便利になるほど対人コミュニケーションが減り、ストレスは増します。植物がある暮らしは、デジタル社会のストレスを埋めてくれます。花き業界は今の苦境をチャンスに変える努力が必要です。
環境に優しい福岡市に
――アンバサダーとしての意気込みを聞かせてください。
花の良さをもっと発信したい。私自身がもっと花を使いまくって、身近に花を感じられる空間を福岡市内につくっていきたいです。私は吉本興業と業務提携していて、YouTubeでオンライン教室を開いています。「演芸」と「園芸」の「Wえんげい」でPRしています。
福岡市は九州のリーダー都市としてだけでなく、日本にとってはアジアの玄関口、ハブとしての役割も期待されています。福岡が率先して植物や花をまちづくりに生かし、自然と共生する国際都市の模範となるべきです。植物や花をより近くに感じられる、環境に優しい福岡市へのお手伝いをしていきたいです。