左官職人が手がけるアート 大野城市にある「三浦鏝絵美術館」
住宅街の中でひときわ目立つ「鏝(こて)絵」の家。福岡県大野城市にある「三浦鏝絵美術館」が、知る人ぞ知るインスタ映えスポットとして注目されている。
この私設美術館は、JR鹿児島線の水城駅から歩いて5分ほどの場所にある。同市の左官業、三浦辰彦さん(80)が、自宅隣のアパート地下に、これまで手がけた作品を展示している。
鏝絵とは、漆喰(しっくい)を塗り上げて描く、日本で発展したレリーフのこと。左官職人が鏝で仕上げていくことから、名前が付いたという。九州では大分県宇佐市や日出町などに多くの作品が残る。
三浦さんは15歳のときから左官の仕事に携わり、現在も創作を続けている。20歳の頃、ロダン展で見た彫刻作品に魅せられ、「自分でも心に響く作品を作りたい」と独学で鏝絵に向き合うようになったという。
作品は、招福の願いを込めた恵比須や大黒、鶴亀など伝統的なデザインの枠にとどまらない。「身近なアートになれば」と、アニメ「ドラえもん」や、バーチャルシンガーの「初音ミク」など新しい題材にも挑戦し、その数は200を超える。中にはフランスやトルコ、タイなど海外の芸術祭で高く評価された作品もあるという。
訪れる人は全国から。「感慨深い作品がたくさんあり、異世界にいるかのよう」「制作の痕跡をうかがえるアトリエは、美術館が息をしているよう」といった感想が寄せられる。
美術館は入館無料。「いつでも開けています。自由に撮影してもらって構いませんよ」と、三浦さんを支える妻の和子さん(79)が笑顔を見せた。