奉納されたおもちゃの刀が山積みに 糸島市にある七郎神社のなぜ?
福岡県糸島市と佐賀県唐津市の県境に、数百のおもちゃの刀が奉納されている不思議な神社があるという。早速、訪ねてみた。
神社の名前・七郎とは?
「七郎神社」。国道202号沿いの茂みの中に、小さな鳥居がわずかに見えた。鳥居をくぐった先にある暗い洞穴の壁面に、おもちゃの刀が山積みになっている。
なぜここに、こんなにたくさんの刀が――。地元の歴史や文化を研究する「糸島ば語る会」会長で、観光ボランティアガイドも務める吉丸克彦さん(79)に話を聞いた。
いわれは、奈良時代までさかのぼる。大宰府に左遷された藤原広嗣(ひろつぐ)が、政権への不満から乱を起こした。戦いに敗れて逃げる途中、広嗣が乗る馬の手綱を取っていた右馬七郎(うめ・しちろう)が足をすべらせて崖から転落した。
石窟に入って寒さをしのいだが、風邪を引いていたのだろう、せきをしたため官軍に見つかってしまう。七郎は自ら刀を取り自害した。740年のことだ。
悲運を哀れんだ地元の人たちが、洞穴に七郎の霊をまつったのが神社の始まりで、やがて刀が奉納されるようになったそうだ。
せきの病を一刀両断!
吉丸さんによると、刀を奉納するのは「せきを切る」という意味が込められているという。「それが転じて、せき、ぜんそくの神様になったようです」
吉丸さんが幼い頃にはこの風習が地元で定着していた。せきに悩まされる近所の子どもが七郎神社にお参りすると回復し、木刀やおもちゃの刀を奉納していたという。
七郎の死から1300年近くたった今、せきと聞いて頭に浮かぶのは新型コロナウイルス――。コロナ禍の終息を願い、神社を後にした。