沖ノ島の世界遺産登録から5年 西谷正・九大名誉教授インタビュー

沖ノ島への思いを語る西谷さん(宗像市の「海の道むなかた館」で)

 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の世界遺産登録から5年になった。推薦書案の作成に携わり、ガイダンス施設「海の道むなかた館」の館長を務める西谷正・九州大名誉教授(83)がインタビューに応じ、調査研究や情報発信の拠点となる「世界遺産センター」新設の構想を語った。


西谷 正(にしたに・ただし)さん

1938年、大阪府高槻市生まれ。66年、京都大大学院修士課程修了。福岡県、宗像市、福津市、宗像大社でつくる「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群保存活用協議会の専門家会議名誉委員長。九州歴史資料館、糸島市立伊都国歴史博物館名誉館長。専門は東アジア考古学。

保存に万全、将来に種まき

――この5年の活動や成果は。

 「遺産の保存に万全を期してきた。遺跡がきちんと守られているか、定期的にモニタリング調査を続けている。沖ノ島は海の神様だが、その海がプラスチックごみで荒らされている。多くの団体が海を守る活動に積極的に取り組むようになったことも、登録の成果の一つだろう」

 「登録時に、ユネスコ(国連教育・科学・文化機関)から資産について引き続き調査研究を深めるよう指導があった。全国の専門家に研究を委託し、成果を論文集で発表したり、公開講座で還元したりしている。大きな蓄積だ」


ペットボトルなどのごみが打ち上がっている沖ノ島


――小学1年から中学3年まで9年がかりで、世界遺産学習に取り組んでいる。


 「子どもたちに目線を据え、遺産を学び、楽しむことを強力に進めてもらっている。副読本で学習し、むなかた館や宗像大社辺津宮、新原・奴山古墳群を訪ねる。将来に向け、種をまいている」


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「世界遺産センター」造るべき

――沖ノ島は本土の60キロ沖。上陸も近寄ることもできず、体感しにくい。

 「むなかた館の大型映像などで実物に近付ける手立てを考え、対応しているが、施設が老朽化している」

 「持論だが、5周年を機に、資産の価値をより引き出すための調査研究や公開、活用を担う『世界遺産センター』を造るべきだ。早期開設に向け、世界遺産の保存活用協議会のワーキンググループで原案を作り、できることから着手していくことが必要。静岡県は富士山世界遺産センターという立派な施設を造った」


本土の約60キロ沖にある沖ノ島

――世界遺産になっても観光客が増えず、経済活性化につながっていないという声もある。

 「新型コロナの影響が大きい。今月、商船三井客船のにっぽん丸クルーズで沖ノ島周遊が採用され、私が船内で解説した。こういった民間活力はありがたく、積極的に導入していくべき。あの手この手でPRし、来ていただくという積み重ねが大事だ」


「世界遺産センター」の必要性を訴えた

――次の5年、10年に向けて。

 「世界遺産センター建設に向けて知恵を絞る。皆さんには遺産を理解し、歴史のロマンを楽しんでもらいたい。原爆ドーム(広島市)の近くにマンションが建つとして問題になったが、あってはならないこと。辺津宮周辺では、世界遺産にふさわしい景観や環境を守っていかなければならない」


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