胃袋にすみつくと、色事を好むようになる「気積(きしゃく)」

 にょろにょろ、もぞもぞと動き出しそうな生き物たち。奇抜な形と色ですが、どこか愛嬌のある彼らは、名前を「はらのむし」といいます。1568年、大阪に住んでいた茨木二介元行(いばらきにすけげんぎょう)によって書かれた医学書「針聞書(はりききがき)」に記されている想像上の虫で、当時はからだの中で悪さをして病気を引き起こすと考えられていました。いまは、九州国立博物館を代表する“愛すべき悪役”のキャラクターとして人気を集めています。


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「針聞書」ってなに?


 九州国立博物館は、東京、奈良、京都に次ぐ4番目の国立博物館として、2005年に福岡県太宰府市にオープンしました。「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」というコンセプトのもと、収蔵品の第1号として迎えられたのが「針聞書」でした。

 中国で誕生して日本に入ってきた東洋医学が、どのように発展したかを示す貴重な資料であり、現存最古の鍼の流儀書ともいわれています。遊び心たっぷりに描かれたようにも見えますが、当時はこの虫たちが体の中で悪さをすると信じられている時代。茨木二介元行は技術と知識の限りを尽くし、鍼灸師が一人前になるために知っておくべき基本を4部構成でまとめ、全63種類の「はらのむし」を書き記しました。

PRキャラクターに抜擢されたワケ


突如出現して体内を転げまわる「脾の聚(ひのじゅ)」

 九博のオープンと同時に、博物館のPR役に抜擢された「はらのむし」たちですが、九博がほかの国立博物館より遅れて開館したことにも起用の理由があるようです。

 いわゆる“愛されキャラ”を作っても、世の中にあふれていて、すぐに埋もれてしまうのでは――。考え抜いた末に選ばれたのが、この一癖ある「はらのむし」でした。大人が見ればその正体と特徴に興味をもち、子どもが目にすれば独特すぎる風貌に釘付けになる。こうして現代人の前に現れた「はらのむし」たちは、幅広い年代から注目され、九博を支える人気者となりました。


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 博物館1階の体験型展示室「あじっぱ」では、針聞書のむしたちをいつでも見ることができます。


体験型展示室「あじっぱ」(九州国立博物館提供)

 物販コーナーではTシャツや絵本、おはじきやフィギュアなども並んでおり、好評を得ています。


物販ゾーンに並んだグッズ

国立博物館発のオリジナルアニメにも

 今年3月には、映像企画・制作会社「モンブラン・ピクチャーズ」(福岡市中央区)と、絵本作家の石黒亜矢子さんによってアニメーションも生まれました。「はらのむし」たちが博物館を抜け出して、人間のからだに忍び込もうと四苦八苦する短編ストーリーは現在、YouTubeで楽しむことができます。近々、続編がリリースされるかもしれないとのことです。
 九州国立博物館の担当者は「ヘンテコなむしたちをきっかけに、博物館や収蔵品に興味を持つきっかけになれば」と話しています。





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