レプリカから昔に思いをはせる 九州国立博物館で「本物のひみつ」展

 数多くの文化財を保存・展示する九州国立博物館(福岡県太宰府市)が、「レプリカ」に着目した企画展「ならべてわかる本物のひみつ」を開いています。博物館では、貴重な展示物をガラス越しに眺めながら解説パネルに目を通すという観覧が一般的ですが、今回は精巧に再現したレプリカを並べて展示。復元された土器の断面や銅鐸(どうたく)の音を見聞きして、想像力をかき立てながら楽しめる内容となっています。会期は11月23日(月・祝)までです。


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見て聞いて「昔」を感じる

 会場となっている文化交流展示室の一角には、レプリカ6点と、それぞれの実物などがセットで並んでいます。解説パネルには用途や大きさ、素材などが記され、「表面の模様は何を表すか想像してみよう」「現代のものとくらべてみよう」など、考えを巡らせながら展示を楽しむ一言も添えられています。


レプリカと実物などが並ぶ展示ゾーン

 縄文時代の「火焔型(かえんがた)土器」は寸法や模様はもちろん、ひびまで忠実に再現されています。会場では、そのレプリカを縦半分に切った断面を展示しており、どれくらいの量が入るのか、どんなものなら入りそうか――などと、当時の暮らしに思いをはせ、想像を膨らませることができます。


展示されている銅鐸のレプリカ

 弥生時代の銅鐸もあります。歴史の教科書でよく目にしますが、実際にどんな音が鳴るのかを想像するのは難しいのではないでしょうか。ここでは、青銅で作ったレプリカが発する音が3分おきに流れ、弥生人たちが耳にした太古の響きを体感できます。


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自由な発想で楽しんで!

 会場ではほかにも、奈良時代の鬼瓦を下から見上げて視線を合わせてみたり、平安時代の仏像の断面を見たりすることができます。企画を担当した主任研究員の加藤小夜子さんは「文化財の歴史的経緯を知るだけでなく、自由な発想で展示を楽しんでほしい」と呼びかけています。


鬼瓦のレプリカと目を合わせる工夫も

 今回の展示のもう一つのテーマは、「障害の有無にかかわらず楽しめる」というものです。会場の解説パネルは車いすから見やすい高さに設置し、チラシなどには点字を配しています。


点字でも説明しているチラシ

 加藤さんによると、本来ならレプリカに触って素材の感触を確かめられる企画にしたかったとのこと。計画段階で新型コロナウイルスが広がってしまい、感染防止のために見て聞いて楽しんでもらう趣向に変更したそうです。それでも、昔の様子を肌で感じて理解を深められるよう、展示の工夫が至るところにされています。


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レプリカ作りの強い味方

 展示を見ていて不思議に思ったのは、「どうやったら、こんな精巧なレプリカができるのか?」ということです。複雑な模様だけでなく、外見から分かるはずもない内部構造やひびまで再現されています。
 その秘密は、九博に導入されている「X線CTスキャナー」にありました。今回はその装置を特別に見せてもらいました。


精巧なレプリカ作りを可能にする「X線CTスキャナー」

 機械中央にある回転台に、構造などを解析したい対象物を載せ、全方位からX線を照射します。透過した画像を組み合わせることで、内部の立体的な構造を把握できるとのこと。例えば、火焔型土器をスキャンすると、器に約5センチ間隔のひびが見つかりました。このことから、一つの粘土を成形したのではなく、いくつかの粘土を重ねながら形にしたことが分かりました。


火焔型土器の断面。線状に見えるのは粘土を重ねた痕跡という

 同様の装置を持つ博物館は国内では少数だということです。レプリカに光を当てる今回の展示は、九博ならではの企画だったようです。



イベント名 ならべてわかる本物のひみつ~実物とレプリカ~
開催期間 2020年9月8日(火)~11月23日(月・祝)
※月曜休館(9月21日は開館して23日休館、11月23日は開館)
開催場所 九州国立博物館(福岡県太宰府市石坂4-7-2)
開催時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)
観覧料 大人:700円/大学生:350円/高校生以下:無料
公式サイト ならべてわかる本物のひみつ~実物とレプリカ~

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