博多祇園山笠の現存最古の人形 受験生もやって来る宇賀神社の「落ちない馬」
3年ぶりに舁き山笠(かきやま)が街を駆け抜けた博多祇園山笠。福岡市中央区大宮の宇賀神社には、現存する最古の山笠人形といわれる「馬人形」が奉納されているという。早速、訪ねてみた。
「お馬さん」の愛称で、地域の人に長く親しまれている宇賀神社。江戸時代の享保年間に福岡藩が大飢饉(ききん)に見舞われたことから、五穀豊穣(ほうじょう)を祈願して造られたという。
朝夕は多くの通勤・通学客が行き交う西鉄天神大牟田線・平尾駅近くにある鎮守の杜。ビルに挟まれ、窮屈そうな参道の途中を西鉄の高架が横切り、電車が頭上を通っていく。
拝殿に着いて、天井を見上げると、長さ2メートルを超える巨大な栗毛の馬人形が。今にも天に駆けだしそうな躍動感に目を見張った。
人形を調査した熊本市現代美術館の冨沢治子学芸員(46)によると、馬人形に使用している新聞紙の日付(1929年7月の福岡日日新聞)から推測して、今から1世紀近く前に制作されたものではないかという。
2017年の修復時に立ち会った現役の博多人形師は、材料や作り方から山笠の人形との共通点を指摘。リアリティーある「山笠の飾り」だったので「処分するのはもったいない」とそのまま奉納したのでは、と推測する。また1929年当時は、近くで草競馬が開催されており、それに関連する奉納だったのではないかと考えられるという。
一方、宇賀神社は受験生にも慕われている。総代の下假(しもかり)正徳さん(81)によると、最大震度6弱を記録した2005年の福岡県西方沖地震では、鳥居が壊れたり、拝殿の絵馬のほとんどが床に落ちたりしたが、馬人形は落下しなかったそうだ。
そのため「落ちない馬」「うま(馬)く受か(宇賀)る」などの験を担いで、シーズンになると多くの受験生が参拝に訪れるという。
朝、そっと手を合わせてから通勤する人の姿が見られる地域のよりどころ。境内では、セミのにぎやかな鳴き声が響いていた。