うどん三国志 激戦の地・福岡で老舗チェーンがしのぎ削る

 福岡県に本社を置く老舗うどんチェーンが、店舗網を広げたり地域密着を貫いたりと、独自の戦略でしのぎを削っています。それぞれ根強いファンがいる「資さんうどん」(北九州市)、「釜揚げ牧のうどん」(福岡県糸島市)、「ウエスト」(福岡市)の3社を取材しました。


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福岡県人のソウルフード

 全国的にラーメンが有名な福岡は、うどん発祥の地とされています。開祖が鎌倉時代に中国から製粉技術を持ち帰ったと伝わる承天寺(福岡市博多区)には「発祥の地」を示す記念碑があります。


「うどん発祥の地」の碑がある承天寺

 総務省の家計調査によると、2018年のうどん・そばの外食支出額(総世帯)は、全国の県庁所在地と政令市の中で福岡市(8923円)が2位です。讃岐うどんで知られる首位・高松市(1万3299円)との差はありますが、うどんは福岡県人のソウルフードなのです。


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ニーズある場所に出店

 北九州市で創業した「資さんうどん」は7月、佐賀県内の1号店「佐賀開成店」を佐賀市にオープンしました。資さんうどんはサバから取ったダシとコシのある麺が人気で、現在は福岡県を中心に約40店を展開しています。
 2018年3月には、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングのグループ執行役員を務めた佐藤崇史さんを社長に迎え、拡大路線を鮮明にしました。佐藤さんは「ニーズがあるところに店を出すことが使命。北九州で培った味には自信を持っています」と話し、台湾など海外への展開も視野に入れています。


家族連れでにぎわう「資さんうどん」(佐賀市で)

地域密着を貫く

 「釜揚げ牧のうどん」は、ダシを吸って膨らむ麺がファンの支持を得ています。このダシの品質を保つため、福岡県糸島市にある製造工場から1時間半以内で配送できるエリアに出店を限定しており、現在は福岡、佐賀、長崎県の計18店で営業しています。広報担当者は「これからも地域密着を守っていく」と話します。


根強いファンが訪れる「釜揚げ牧のうどん」(福岡市で)

多様化に対応

 九州と関東に約110のうどん店を展開する「ウエスト」は、「九州は独自のチェーン店が多く、うどんの激戦区」(広報)としています。ウエストは、なめらかな麺の喉越しや揚げたての天ぷらが人気です。居酒屋メニューを提供する店舗など業態の拡大を進め、多様化する消費者ニーズに応えようとしています。


業態拡大にも取り組む「ウエスト」(福岡市で)

競争で高まる魅力

 福岡のうどん文化に詳しい西南学院大名誉教授の高倉洋彰さんは「商人の街だった博多では、短時間で提供される柔麺のうどんが、せっかちな気風に合い、ラーメンとともに好まれてきました。個性的なうどんチェーンが競争することでバリエーションが広がり、ご当地料理としての魅力も高まるはず」と話しています。



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