「海の環境問題に関心を」 漂着物に『いのち』を吹き込むアーティスト

「モノにも"いのち"があることを伝えたい」。大好きな今津の海岸で、胸いっぱいに空気を吸い込むしばたさん

 福岡市西区今津に工房を設け、地元の海岸の漂着物で個性的な作品を生み出すアーティスト・しばたみなみさん(32)。アートを通して海洋汚染防止を訴える取り組みは、全国から注目されている。

知らなかった…が出発点


漂着物で作った「今津のクジラ」を手にするしばたさん

 近年、世界的な問題となっているプラスチックごみによる海の汚染。しばたさんが漂着物に関心を持ったのは9年前にさかのぼる。

 今津の海岸の清掃活動のポスター制作を依頼され、活動に参加した。大型冷蔵庫や浴槽、ハングルが表記された容器など、浜辺に打ち上げられた漂着物。その量が軽トラック数台分に上るのを目の当たりにし、「言葉にならない衝撃」を受けたという。


作品用とそれ以外の漂着物を拾うため週に数回、海岸を散策する

 幼い頃に遊び、親しみをもっていた地元の海辺が、漂着物やごみであふれている現実。「知らなかったことが恥ずかしい」と思い、「自分にも何かできないだろうか」と環境問題をテーマに、作品に向き合い始めた。「海洋汚染が切実な問題になっていることを知ってほしい」と話す。


「今津のクジラ」。撮影のため海岸に置いてもらった

 代表作「今津のくじら」は、小学校の国語の授業で習う「くじらぐも」からヒントを得て約2か月かけて完成させた。長さ約4メートルの「くじら」は、バケツの取っ手やバドミントンのシャトル、釣りさおの一部などで構成され、どんなものが海岸に落ちていたのかが分かるようになっている。


モノには"いのち"がある

 作品「ハートランプ」は、本体に付いている聴診器を体に当てると、オブジェの内部が光る仕組みになっている。プラスチックごみやビニールの包装紙などを加工して作ったもので、子どもが特に興味を示すそうだ。


聴診器を当てると、内部が光る「ハートランプ」

 思い入れがあるのは、黄色い漁網で作ったクジラ。海岸で拾った直径1センチほどの網の繊維を「ひたすら指を使って1ミリ程度までほぐしました」。その期間、約2か月――。「気が変になりそうでした」と振り返る。


漁網の繊維1本1本を地道にほぐして作った

 「モノには"いのち"があるんだよ」。幼い頃に聞いた祖母の一言に影響を受けたという。これまで漂着物で手がけた作品は約100点に及ぶ。「海ごみとされるモノたちが役割を得て、新たに"いのち"を吹き込まれる。モノがよみがえる驚きを伝えたい」


様々な作品がつり下げられた工房

 しばたさんの作品は、全国のデパートやショッピングセンターなどで展示されてきた。一方、海辺で拾った廃品や家庭の廃材で作品を作るワークショップを開き、環境問題を考える機会も提供している。世界に一つだけのごみを手にして、それぞれが編み出すアート。子ども以上に大人の方が制作に夢中になるのだという。


「海からの漂着物は、作品を通して新たな"いのち"を吹き込まれる」

 週に数回、1時間ほど海岸を清掃しながら、プラスチックごみや食品トレーなど、作品の素材を集めて歩くしばたさん。「海の環境を守るために何ができるのか。私の作品がきっかけになって、それそれが考えてくれれば」と願う。



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