豊かな自然を次世代に! 博多湾の環境保全に取り組む「ふくおかFUN」
記事 INDEX
- 水陸で湾の清掃活動
- 小さなごみも大問題
- 魚の産卵場所を再生
アジやカレイ、エビといった食卓でもなじみの深い魚介類が豊富な博多湾。豊かな自然を守り次世代に継承しようと、福岡市の一般社団法人「ふくおかFUN」は湾一帯の環境保全活動に取り組んでいる。
小さなごみも大問題
昨年11月下旬、中央区の福浜海岸で子どもから高齢者まで約110人が清掃活動を行った。海中ではダイバーがごみを拾う、水中と陸上での取り組みだ。ごみの多くはプラスチック製で、主催した同法人代表理事の大神弘太朗さんは「大きいごみだけでなく微小なマイクロプラスチックも問題なんです」と語った。
大神さんは沖縄県・西表島でダイビングのインストラクターをしていた。東日本大震災後、海中のがれき撤去や写真を洗浄するボランティアに参加。「ダイバーとして世の中に貢献できることがあるはず」と思い立ち、2014年に法人を発足させた。
博多湾は「透明度は高くないが、外洋に出る前の稚魚も多い豊かな海」という。深い所でも水深23メートル程度で、湾口が狭く、外洋との海水の循環が遅いのも特徴だ。
一方で、海底には沈んでいるごみが多く、稚魚がすみつく海草が定着できなくなるなどの問題が生じている。九州大工学研究院の清野聡子准教授は「福岡市は人口規模が大きく、ごみも多い。流入したごみは海流に乗り、広範囲に広がる」と指摘。「魚を人間に置き換えるなら、自宅の上に大きなごみが突然降ってくるのと同じことが海で起きている」と危機感をあらわにする。
魚の産卵場所も再生
同法人は年に数回、ダイバーによる海底のごみ回収を行い、海岸清掃や授業などを通じて啓発に力を入れている。また、魚の産卵場所やすみかを復活させようと、海草のアマモをこれまでに3500本以上植えた。種子が湾内に広がっているとみられ、大神さんは「今までなかった場所にもアマモ場ができた」と手応えを感じている。
海草は二酸化炭素を吸収するため気候変動対策にも期待され、同法人や漁業関係者などで作る「博多湾NEXT会議」も藻場整備を進める。事務局の福岡市みなと環境政策課の久原明子課長は「ダイバーは貴重な存在」と信頼を寄せる。
このほか同法人は、生態系への影響や悪臭が問題になっているアオサの大量発生にも関心を寄せ、アオサを紙製品や食品に活用する方法を模索している。
「大きいことを言えば、地球を守りたいというのが目標。ダイバーとして自然のすばらしさを一人でも多くの人に伝え、福岡の海を誇りに思ってもらいたい。それが海を守ることにつながれば」。大神さんは、一層思いを強くしている。