木製パレットをチップに 環境負荷軽減へ福大生と企業が協力

木製パレットの前で、チップを手にする西尾さん(左から2人目)と福岡大の学生ら

 物流現場で使われる荷物台「木製パレット」をチップ化して自然に返す活動に、福岡大の学生と福岡市の運送会社が取り組んでいる。パレットは、繰り返し使われることなく廃棄されるケースも多いといい、学生や同社担当者は「二酸化炭素(CO₂)を排出してしまう業界。少しでも環境負荷の軽減につなげたい」としている。

「焼却処分」の現状に驚き

 パレットはトラックで荷物を輸送する際などに使われる物流資材で、すのこに似た形のものや、ボックス形などがある。素材も木材やプラスチック、金属など様々だ。

 日本パレット協会(東京)によると、木製は価格が安いことなどから、回収せず1回しか使わないことが多いという。2023年度の木製の生産量は約3100万枚で、素材別では最も多い56%を占める。

 福岡市の運送会社「ニシヒロ」では、グループ会社を含め、年間約1600枚の木製パレットを約100万円かけて焼却処分していた。

 その木製パレットに着目したのが、福岡大の学生たち。企業が抱える課題の解決策を考える講義の一環で、経済学部の約20人が2024年、同社とチームを組んだ。学生たちが福岡県古賀市にある同社の物流倉庫を訪れた際、外に山積みされたパレットが目に留まった。「大金をかけて捨てていると聞き、驚いた」と、学生リーダーの竹本桜さん(21)は振り返る。

処理費用もCO₂も削減!

 活用に向けて様々な企業や団体に接触し、古賀市内のイベントで机やいす、ステージの土台として再利用した。しかし、中間報告として講義で発表すると、「机やいすは、最終的に廃棄することになる。それでは意味がないのでは」と手痛い指摘を受けた。

 情報収集を進める中、学生たちはチップ化して肥料にする企業が県外にあることを知った。「これなら自然に返すことができる」。この企業の取り組みを調べ、ニシヒロでも実践することにした。


チップになった木製パレット


 同社はパレットを粉砕する「ウッドチッパー」を購入。現在、チップを自社の畑にまいて自然に返るまでの期間などを調べている。古賀市との連携も実現し、市内の小学校で樹木の周辺などにまいた。雑草が生えにくくなる効果も期待できるといい、今後も提供する学校を増やしたい考えだ。肥料への活用も検討している。


 専務の西尾孝史さん(47)は「自分たちでは思いつかないアイデアだった。処理費用やCO₂排出量の削減になるだけでなく、小学校にも無償提供することで地域貢献もできる」と歓迎。サブリーダーの山田奈未さん(21)は「企業と一つの目標を達成できてよかった。子どもたちが環境について考えるきっかけになればうれしい」と話している。


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