巡査の殉職から43年 街の安全をきょうも見守る天神地蔵

住民たちから「我が子のように」大切にされてきた天神地蔵(2014年から2022年まで撮影)

 福岡市・天神の交差点。行き交う人や車を優しい表情で見守るお地蔵さんが花壇に立ち、「天神地蔵」と親しまれている。

歩行者を守った若き巡査


天神交差点を見守る地蔵(2014年1月撮影)

 九州でも屈指の交通量を数える天神交差点に、なぜお地蔵さんが――。そばを通るたびに気に掛かり、10年近く前からカメラに収めてきた。調べると43年前の不幸な出来事に由来するらしいと分かった。


2008年(上)と現在の天神交差点(横断歩道そばの花壇に地蔵が立つ)

 お地蔵さんは、1979年9月23日未明に起きた事故で殉職した福岡県警中央署の巡査・田中政義さん(当時28歳)を慰霊するため、篤志家が建てたといわれる。


横断歩道のそばにたたずむ

 田中さんは、信号を無視した暴走族のバイクから横断歩道を渡っていた人を守ろうとして、はねられ、亡くなった。新婚で、子どもが生まれたばかりだったそうだ。


悲しい事故は未明におきた

9月23日で事故から43年

 お地蔵さんの背丈は約60センチ。季節の移り変わりとともに、ボランティアの女性によって服や帽子が取り換えられたり、周辺を掃除されたりしている。朝、お地蔵さんに一礼して職場に向かう人もいるという。


初夏。手入れされた花々の先に見えた天神地蔵

 お地蔵さんを30年以上にわたって管理している町内会長の藤木敏一さん(73)は「自らの命をなげうって人を守ろうとした、田中さんへの敬意です」と話す。「天神地蔵を通じて、田中さんの勇気ある行動を知ってほしい」

 2018年には酒に酔った男性に蹴られ、頭部が折れてしまう事件もあった。地域の人たちから7万円以上の寄付が集まり、修復して元の場所に戻すことができた。


行き交う人たちを見守る

 若き巡査が犠牲になって23日で43年。お地蔵さんは交通安全のシンボルとして、きょうも花壇にたたずみ、街を見守っている。



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