持続可能な未来へ一歩 不用化粧品をクレヨンに再生

化粧品から生まれ変わったクレヨン

記事 INDEX

  • 「もったいない」から行動
  • 気軽に取り組めるSDGs
  • ”使用済み”の回収広がる

 福岡市の会社員の女性が、不用になった化粧品をクレヨンに生まれ変わらせるリサイクルに取り組んでいる。捨てるはずの化粧品を画材にすることで、「持続可能な社会の実現につなげたい」と話している。

「もったいない」から行動

 取り組んでいるのは、同市の坂口翠さん(40)。使わなくなったり、試供品で余ったりしたパウダータイプのファンデーションやアイシャドー、頬紅、口紅などを使う。化粧品会社などから集めたものを細かく砕いてからミツロウなどを混ぜ、熱した後冷やし固めてクレヨンにしている。化粧品ならではのキラキラとした発色が特徴。段ボール1箱分の化粧品から約200個ができる。

 坂口さんは、大学卒業後に化粧品メーカーに就職。販売などを担当した時、シーズン後に試供品が大量に廃棄されることを知った。百貨店で働いていた時には「ごみ捨て場に中身が入ったままの化粧品がたくさん廃棄されていたのを見たこともある」という。

 「もったいない。廃棄を減らしたい」。そんな思いもあり、2010年にメーカーを退社。11年に化粧品について学ぶため九州大大学院に進学し、任意団体「プラスコスメプロジェクト」を結成して模索を始めた。


「プラスコスメプロジェクト」に取り組んでいる坂口さん

 もともと物づくりが好きで、社会人になってからは口紅を手作りしていたことも。化粧品の原材料でもある天然の鉱物「マイカ(雲母)」は塗料などにも使われていることから、画材にリサイクルできないかと発案した。最初は絵の具でスタート。化粧品メーカーや百貨店の売り場に回収箱を設置して実演するワークショップなども開いた。

 2014年には結婚を機にカナダへ移住し、19年に活動を再開。絵の具より子どもが扱いやすいクレヨンに切り替えた。SDGs(持続可能な開発目標)への意識の高まりもあって日本の企業などから問い合わせが増えたため、帰国して昨年頃から国内で活動を始めた。

気軽に取り組めるSDGs

 昨年5月に会社を設立し、メーカーなどへの回収の呼びかけを本格化。製作は坂口さんら3人が自宅で行っている。ウェブサイトを通じて個人からの化粧品の提供も受け付けており、月に15人ほどが協力している。

 使いかけのアイシャドーなど5、6点を提供したという福岡市の女性(42)は「捨てるしかないと思っていた化粧品でリサイクルに貢献できてうれしい」と話す。


「簡単に取り組める形で、持続可能な未来に」


 日本サステナブル化粧品振興機構(東京)によると、使う人の約7割が「化粧品を最後まで使用しないまま捨てている」という海外のデータもあるという。坂口さんは「今ある資源を無駄にせずに活用できる仕組みを、簡単に取り組める形で実現していくことが大事。それが持続可能な未来につながる」と話している。


 クレヨンはホームページで販売しており、ミニサイズ1個200円、9色入り1箱1800円など。化粧品提供の問い合わせはメールで。

”使用済み”の回収広がる

 SDGsへの関心の高まりで、メーカーなどが使用済みの自社商品を回収する動きも広がりを見せている。

 新日本製薬(福岡市)は4月、複数の主力美容ジェル商品のうち特定の素材の容器をリサイクルする取り組みを始めた。化粧品容器は色や形、装飾などが異なるため、品質を保ったまま同じ容器に再生する「水平リサイクル」が難しいとされていたが、容器メーカーの協力で可能にしたという。

 資生堂と積水化学工業、住友化学は7月、連携プロジェクトを発表。資生堂が回収した自社製プラスチック容器から、積水化学が化学品の材料になるエタノールを合成し、住友化学がエタノールを用いてプラスチック容器の原料を作る。2025年以降の運用を目指す。ユニクロやジーユー(GU)などを展開するファーストリテイリング(山口市)は、07年からユニクロの店舗で回収した服を難民キャンプなどに届けている。


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