ありがとう!「フクユタカ」 福岡県産の大豆が世代交代へ

福岡県産の「フクユタカ」はあと数年で、お目にかかれなくなりそう

記事 INDEX

  • 次は「ふくよかまる」
  • 10年以上かけて開発
  • 豆腐屋さんも太鼓判!

 福岡県は、西日本で広く普及する大豆「フクユタカ」を超えるべく、新たな品種「ちくしB5号」を開発しました。商標は「ふくよかまる」。食品メーカーが今年から、新品種を用いた豆腐や納豆を順次、売り出します。県は、3年後には県内産をすべて、ふくよかまるに切り替える方針です。

次は「ふくよかまる」

 「九州、日本を代表するブランドになることを確信している」。服部誠太郎知事は2月15日のお披露目会で、新品種への大きな期待を示しました。

 ふくよかまるは、集中豪雨が目立ち始めた2007年から、風雨に強い大豆を目指して福岡県が開発を進めてきました。フクユタカに比べ、種まきができる期間が2週間ほど長いほか、丈が短いため風の影響を受けにくく、粒が大きめで収穫量が1割程度多いことが特長です。


お披露目会でロゴなどを発表する服部知事


 名称は、生産者や加工メーカーの関係者らが寄せた338件の中から選ばれました。大豆の粒の大きさや元気良さ、丸さを表現。「ふくよかに育ち、皆に幸福を広げてほしい」との願いも込められているそうです。

 ロゴは、緑のさやが成熟して茶色になり、金色の大豆ができるという生育過程をイメージした色遣いとなっています。


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10年以上かけて開発

 県農林業総合試験場は、温暖な気候でも育つ品種を全国から取り寄せ、最適な掛け合わせを探りました。フクユタカを含む複数の組み合わせにより、10年以上かけて誕生した新品種。「いよいよ普及することになり、感無量です。今後の産地拡大へ改めて気を引き締めたい」。内川修・作物栽培チーム長(52)は言葉に力を込めました。 


10年以上をかけて開発された「ふくよかまる」

 試験栽培を経て、昨年、本格的な栽培がスタート。県内の農家が計789ヘクタールで取り組みました。今年の栽培面積はその2倍以上に広がる見通しです。

 JA全農ふくれん大豆部会の山口安雄会長(72)は「種まき時期の自由度が高いのはありがたい。一粒でも多く消費者に届けられるよう生産したい」と意欲を見せます。

 県のまとめによると、2021年の県内の大豆の作付面積は8190ヘクタールと全国4位ですが、豪雨などにより生産に影響が出ることも多く、10アールあたりの収量は88キログラムと38位にとどまります。

 収量アップが課題となる中、県は26年までに県内で生産される大豆を全面的にふくよかまるに転換したい考えです。切り替え後は、豆腐や納豆のパッケージで「福岡県産フクユタカ」を目にする機会はなくなりそうです。

豆腐屋さんも太鼓判!

 ふくよかまるを使用し、パッケージにロゴが入った食品も登場しています。栽培スタートを受け、一部メーカーが商品化を進めてきました。

 豆腐生産で九州トップのシェアを誇る三好食品工業(福岡県田川市)は4月以降、「こたま豆腐」などを発売する予定です。こたま豆腐はおぼろタイプで、まろやかな口当たりが特徴です。


お披露目会に登場した「こたま豆腐」

 「豆腐屋を堕落させる豆」と言うほど、フクユタカに信頼を寄せてきた三好兼治社長。にがりとの相性がよく、使いやすいためですが、ふくよかまるを使ってみると「もっと相性がいいようで、甘みもあり、おいしい豆腐ができる」と大絶賛です。同社では一部の既製品についても7月頃から順次、新品種を使っていくそうです。


丸美屋のスティックタイプの納豆

 丸美屋(熊本県和水町)は、スティックタイプの納豆の新商品を3月に投入。一部の既製品も今秋以降、ふくよかまるを使用する方向で検討しています。JA全農グループのふくれん(福岡県朝倉市)は豆乳のパック商品を2月下旬から販売。新品種誕生のPR用として数量限定で作っており、出荷は3月末頃まで続く見込みです。


ふくれんの豆乳


 福岡県の担当者は「ふくよかまるを使った商品の甘みやコクは、フクユタカ以上との評価も受けています。フクユタカの”こども”で、いいところはしっかり受け継ぎました」と、今後の普及を確信しています。 



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