世界でうける日本の伝統産業って? 古賀の老舗桐箱店の場合
桐製品が評価された理由は?
――じわじわと世界に桐製品が広がっているようですが、何がうけたんでしょう?
見た目の良さだけでなく、軽さや防虫効果などの機能が支持されたと思っています。多湿のアジア圏では調湿効果が受け入れられ、欧米などでは「脱プラスチック」の流れで注文も増えています。そして、うちの会社ならではの武器も大きな要因の一つです。
――武器とは?
うちの強みは、よその桐箱よりも3割ほど安い価格で大量に生産できることです。創業から90年の間に、大量の発注や納期の短い注文を何度も受けてノウハウを積み、ある程度の注文なら対応できる生産ラインも持っています。また、特別な製品を作る職人も4人います。海外では日本の伝統工芸品は「高い」というイメージを持たれているせいか、価格で驚かれることは多いです。しかもオーダーメイドですからね。
もうかる伝統産業に!
――海外展開を始めて気づいたことは?
日本では、創業○○年というのがプレミアになり、それだけで仕事が入ることもあります。しかし、海外では全く関係ありません。「うちは創業90年なんです」と言っても「そうなんですか。で、商品の実用性は?」となる。うちは、そこそこ歴史があり、実用性と価格面で要望に応えられた。それで、日本と海外の市場にうまく合わせることができたと思っています。
――日本の伝統産業が世界で勝負するにはその視点が大事かもしれません。
私は、伝統産業こそもうかる産業にしないといけないと思っています。昔のものをそのまま続けるのが「伝承」で、大事な柱は変えずに時代に合わせて良いところを取り入れていくものが「伝統」。桐箱の場合、時代や国ごとにそれぞれ違う「実用性」をしっかりと取り入れることで「伝統」を守ることができるはずです。また、他の伝統産業でもそうですが、産地だけでなく、職人たちに注目し、売り出す仕組みも必要だと考えています。
――今年の展望は?
今年は何と言っても、東京オリンピック・パラリンピック。ホテル業界をターゲットにしようと考えています。外国の富裕層が泊まるようなホテルの内装や小物に桐製品を使ってもらえれば、海外の人にもその良さが伝わると思います。そうやって、より多くの人の生活に根付いてほしいと願っています。