世界でうける日本の伝統産業って? 古賀の老舗桐箱店の場合

 洒落た桐箱を作る会社があると聞き、福岡県古賀市の「増田桐箱店」を訪ねました。桐箱と言えば、高級な酒や陶器、着物などを入れる「和」の印象が強いのですが、増田桐箱店ではそのイメージをがらりと変える商品をラインアップし、海外にも販路を広げています。先頭に立つのは32歳の若い社長です。伝統産業への思い、これからの展開などを聞きました。

32歳が率いる老舗

 増田桐箱店は1929年(昭和4年)創業の老舗です。桐箱に収められるのはちょっと特別な一品だと思いますが、増田桐箱店でもデパートや博物館などに商品を納めています。ただ、この会社は米びつやブックエンド、ランプシェードといった様々な日用品も手がけ、海外に輸出もしています。昨年は桐で作った徳利やお猪口が「京都デザイン賞2019」で大賞に輝き、海外企業からオーダーメイドの依頼も受けるほど注目されている会社です。

 会社を率いるのは、祖父から経営を引き継いだ32歳の藤井博文さん。社長に就いたのは25歳のときというから、さらに驚きです。海外展開を始めたのも藤井さんが社長になってから。これまでの歩みを聞いているうち、伝統工芸品への熱い思いが伝わってきました。


藤井博文さん

1987年、福岡県古賀市出身。高校卒業後、台湾への留学を経て、20歳で増田桐箱店に入社した。25歳のとき、母方の祖父から会社を引き継いだ。趣味はモータースポーツとお酒。

軽い気持ちで台湾に…

――海外展開のきっかけを教えてください。

 台湾で桐製の米びつを販売したのが始まりでした。台湾に留学したことがあるのですが、なじみ深い場所にもう一度行きたいと思っても、なかなか時間がありません。そこで「仕事をつくれば行ける」と思い、営業に出向きました。それが始まりです。


海外への展開を振り返る藤井さん

――かなりお手軽な理由ですね(笑)

 そうですね。米びつは当時、現地在住の日本人を中心に売れていたのですが、干物や野菜など、いろんなものを保存する「フードストッカー」に商品名を変えると、台湾の人にも売れるようになりました。そこを足がかりに、中国やアメリカのロサンゼルスなどにも進出しました。アメリカも「L.A、なんかかっこいいじゃん」ぐらいの理由でした。

 うちの会社の主な取引先はデパートですが、私が社長になった2012年にはデパート業界の売り上げが減り、うちの売り上げも落ちていました。なので、新しい販路を開拓する必要があったんです。そういう意味では、戦略的に海外に出たとも言えますね。


増田桐箱店が手がける米びつ。大きさによって4800~9800円


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10か国・地域に輸出

――海外展開は成功でしたか?

 成功したかどうかはまだ分かりませんが、現在は10か国・地域に年間約3000点を輸出しています。売り上げも少しずつ上がっています。もし売り上げが下がったままなら、「海外まで行って何やってんだ」と後ろ指を指されるところでした(笑)

――海外ではどんな使い方をされるんですか?

 例えば、ロサンゼルスのオーガニック食品を扱う店では、透明のアクリル板をはめた箱がシリアルやコーヒー豆を入れるディスプレーとして使われています。家庭向けでは、野菜を入れる保存箱なども売れています。フランスの高級宝飾ブランドからは、「家で再利用できる商品パッケージがほしい」という注文も受けました。


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