一期一会を楽しんで 福岡・春吉地区を愛する人のお酒が完成

「日本酒初心者でも飲みやすい味です」と話すプロジェクト担当の吉野さん

記事 INDEX

  • まちのファンを増やそう
  • 酒造りから生まれる交流
  • ”今年しか飲めない”お酒

 美食のまち「はるよし」と福岡の酒蔵を盛り上げたい――。福岡市中央区の春吉地区を中心に活動している「NPO法人 はるよしが、米作りから取り組む日本酒の第3弾「晴好 HARUYOSHI 03」を完成させ、地域の飲食店や酒店などで限定販売しています。手がける酒造会社が毎年変わるのが特徴で、担当者は「一期一会のお酒をぜひ飲みに来て」と話しています。

まちのファンを増やそう

 NPO法人が活動するのは、中央区春吉や渡辺通、高砂など市立春吉小学校の校区です。繁華街の天神や中洲に隣接する春吉地区には、昔ながらの細い路地や個人商店が残り、人情味ある下町の風情が感じられます。こだわりのバーや居酒屋が路地裏に点在し、大人が集う「美食のまち」としても知られています。


春吉地区の街並み


 まちの魅力を広めてファンを増やそうと20年前、春吉地区で酒店「友添本店」を営む友添健二さんらが中心になって実行委員会を発足。地域の祭り「晴好夜市」や、スタンプラリー形式で飲食店を巡ってもらう「晴酒はしご」などを開催してきました。

 2019年、実行委はNPO法人に。活動方針を改めて話し合う中で、飲食店と蔵元で開いてきたコラボイベントをさらに深化させ、「酒蔵と一緒に、まちに合うお酒を造ってみては」とのアイデアが出て、プロジェクトが始動したそうです。

 フリーライターで、日本酒のプロジェクトを担当する吉野友紀さんは「こだわりのお酒がきっとできると思い、ワクワクが止まりませんでした」と振り返ります。


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酒造りから生まれる交流

 プロジェクトは、はるよしをイメージした”その年だけ”の酒を造るというもの。住民や常連客ら地域を愛する人と酒米農家、蔵元が稲作から関わって、顔が見える関係を築くことを目指しています。


はるよしのファンらが一緒に行った田植え(NPO法人 はるよし提供)

 6月に福岡県糸島市内に集まって田植えを行い、10月末に稲を刈ります。冬の仕込みの時期には、関係者みんなで酒蔵の見学などをします。

 蔵元には吉野さんの側から、▽はるよしをイメージした酒であること▽蔵の特長をいかしたこだわりのお酒をつくること▽米作りから関わること――の三つの条件を示し、趣旨に賛同してくれた福岡県内の酒造会社に依頼します。

 2021年の第1弾は「いそのさわ」(うきは市)、第2弾は「篠崎」(朝倉市)が担当。そして、第3弾の今年は「大賀酒造」(筑紫野市)が手がけました。


大賀酒造が手がけた「晴好 HARUYOSHI 03」

 吉野さんは「酒造りを通じて、はるよしの飲食店や常連客、農家や蔵元との交流が生まれるきっかけになりました」と話します。

”今年しか飲めない”お酒

 「晴好 HARUYOSHI 03」は、大賀酒造の大吟醸「筑紫野」のもろみから抽出した酵母を用い、華やかな香りとやさしい飲み口が特徴です。今年1月下旬に仕込んだ酒は3月上旬に完成し、はるよしエリアなどの酒店や飲食店で買ったり飲んだりできます。NPOの公式サイトで取扱店を紹介しています。


「晴好 HARUYOSHI 03」をグラスに注ぐ友添さん


 県内70蔵の酒をそろえる友添本店では、有料試飲(1杯500円)を行っており、気軽に味を確かめられます。

 友添さんは「酒造会社を毎年変えるというのは、今までにない発想だった」と話します。飲食店や酒店がオリジナル酒の製造を依頼するときは、一つの酒造業者と長く付き合っていくのが業界の一般的な考え方なのだといいます。


「まちも酒蔵も盛り上げていきたい」と話す友添さんと吉野さん

 「蔵元が毎年変われば、それぞれの個性や味の違いを知ることができる。飲み手の単純な発想でした」と吉野さん。「今年しか飲めない一期一会のお酒。はるよしへ飲みに訪れてもらえたらうれしい」


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