好きが高じて…福岡の「バス停図録」出版 著者はバス路線探検家
記事 INDEX
- バス路線図は「宝の地図」
- 1年で1000か所いける?
- 停留所の写真すべて掲載
福岡市内にある西鉄バスの停留所約1000か所を網羅した「福岡バス停図録」が出版されました。著者は「バス路線探検家」を名乗る市内在住の沖浜貴彦さん(50)です。
バス路線図は「宝の地図」
同市中央区の書店「文喫 福岡天神」で7月上旬、出版記念のトークイベントが開かれ、沖浜さんは「マニアの自己満足が詰まった一冊。10年後、20年後に、路線が存在していたかどうかを検証する時の一つの支えになればいいなと思います」と語りました。
のめり込んだきっかけは、子どもの頃に自宅トイレの壁に貼られていた西鉄バスの路線図。「小学生になる前で漢字も満足に読めなかったけれど、バスが走るカラフルな線がいろいろな所にひかれ、宝の地図に見えました」と振り返ります。以来、筋金入りのマニアになり、各路線の終点などあちこちのバス停を訪ねて回りました。
2008年に始めたブログ「ほぼ西鉄バスの旅」が出版社の目に留まり、16年に書籍「秘境路線バスをゆく」に寄稿。出版社から本に載せる肩書を問われ、バスコンシェルジュやバス研究家など複数の案を考えた末、バス路線探検家に落ち着きました。
「研究は成果を出さないといけない気がしますが、探検なら失敗して尻尾を巻いて帰って来てもいいじゃないか。そんな気楽さから名乗りました」と沖浜さん。本業は会社員ですが、ブログのほかにも、バス好きが集まるサロン「バス路線探検家の会」を定期的に運営するなど精力的に活動しています。
1年で1000か所いける?
図録出版のきっかけは22年の初めでした。「福岡市内にはバス停が960か所くらいあります」――。知り合いの西鉄関係者が何げなく発した言葉が引っかかりました。
自身のブログにおよそ7000本の記事を書いていましたが、掲載した市内のバス停は4、5割どまり。「地元に住む者として怠慢ではないか。知っているのに記録に残っていないのが悔しい」。そんな思いが、図録づくりに突き進む力になったそうです。
「日曜ごとに20か所のバス停を撮影すれば……。1年で52週、1000か所はいける」と考えた沖浜さん。しかし結果は「1人では全然ムリでした」と笑います。
地元のバス停から撮り始め、22年4月にスタートした図録づくり。ツイッターで呼びかけて仲間を募り、最終的に26人が協力してくれました。こうして今年5月、図録が書店に並びました。
停留所の写真すべて掲載
図録はA4サイズで、フルカラー218ページ。各バス停の行灯(あんどん)や周辺の写真に、それぞれの名称、ふりがな、西鉄公式コード番号を併せて掲載しています。街の風景になじむバスのイラストなどを配した表紙と裏表紙もこだわりの一つだそうです。税込み3300円。文喫 福岡天神などで購入できます。
記載しているのは22年8月15日時点の情報で、この日は沖浜さんの50歳の誕生日。「格好良く言えば、人生半世紀を生きてきた証しで残しましたとなるのかな。5年、10年後に価値の出る記録と自負していますが、単純に自分の住んでいる最寄りバス停の風景を楽しんでもらえればうれしい」
トークイベントを企画した文喫のスタッフ・天野加奈さんも写真撮影に協力した1人。天野さんは「バスマニアではない私が見ても面白い図録。もっとたくさんの人に知ってほしい一冊です」と話しています。