廃校の体育館でボルダリング三昧! 嘉麻市の体験施設が人気

旧足白小の体育館に整備された「K-WALL」

記事 INDEX

  • 初心者も!家族連れも!
  • ”仲間”の声を背に受けて
  • 校舎は体験型宿泊施設に

 体育館がまるごとボルダリングの施設に――。扉を開けると、圧倒される光景が広がっていた。福岡県の中央部、馬見山などが連なる嘉穂アルプスの麓、嘉麻市の旧足白(あしじろ)小学校の体育館に整備された足白ボルダリングセンター「K-WALL」がユニークな体験型施設として注目されている。

初心者も!家族連れも!

 施設は140年の歴史を経て2014年に廃校となった旧足白小の体育館を改装し、18年にオープンした。福岡市や北九州市などからも利用者が訪れる人気スポットだ。


天井が高く開放感がある館内でボルダリングを楽しめる


 体育館のスペース全体を使って、総延長46.2メートル、高さ最大4.5メートルの計7面の壁がそびえている。センター長の志岐啓太さん(41)によると、九州最大級の壁を備えたボルダリング施設だという。


上級者向けの壁。傾斜は135度


 壁の傾斜は、最も簡単なところで85度、最難関は135度にもなる。壁が天井のように迫り、敵を寄せつけないよう石垣を反らせた熊本城の「武者返し」よりもはるかに厳しい角度だ。壁に配されたカラフルなホールド(突起物)をつかみながら、ゴールを目指す。


壁にはカラフルなホールドが配され、その下に貼られた数字を確認しながらゴールを目指す


 ボルダリングは、東京五輪の正式種目にもなったスポーツクライミングで注目を集めた。K-WALLは、初めての人にも競技の魅力を知ってもらおうと、普段着のまま手ぶらで訪れても楽しめる。専用の靴も用意し、簡単なレクチャーを受けてすぐ壁に挑める。


中央には3歳から利用できる未就学児用の壁もある


 休日には、多くの家族連れがピクニック感覚でやって来るという。3歳から体験できる未就学児用の壁もあり、親子が笑顔でボルダリングに親しむ姿が見られる。意外にも、大人よりも子どもの方がスイスイと壁を登っていくそうだ。


畳が敷かれた休憩室も備えている


 エアコンが利いた館内には、シャワーや授乳室、休憩室もある。体育館の中央には家族連れらがゆっくりできるテーブルも置かれ、食べ物の持ち込みも自由だ。


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”仲間”の声を背に受けて

 せっかくの機会。おなかのたるみが気になる53歳の記者も、インストラクターの向野純司さん(25)に簡単なアドバイスを受けてトライしてみた。


貸し出されている専用シューズを履いてトライ


 まずは初心者向けとなる傾斜85度の壁の前に立つ。「1S」と書かれたピンクのホールドを両手でつかみ、足が地面から離れた時点でスタート。ホールドの下に記された番号を目で追いながら、一つ一つゆっくりとつかんで登っていくと、意外にあっけなく高さ2.5メートルほどのゴールにたどり着いた。


旧体育館の壁面には、卒業生が描いた絵などが掲げられている


 多くの初心者は、一番レベルが低いとされる9級から7級程度まで、体験初日でも到達できるという。95度の壁もなんとかクリアできた。体重はそこそこあるが、腕力には少しだけ自信がある。「思ったよりも簡単。案外いけるかも」


バナナの形をした個性的なホールドも


 続いて同じ9級ながら、傾斜115度の壁に挑んでみた。指先にかかる負担が大きくなり、体が急に重くなった気がする。「えっ!」――。ここでは、たった一つのホールドさえつかむことができなかった。


 悔しいので、最後にもう一度チャレンジする。指に若干のしびれを感じながら、精いっぱい手を伸ばしてみるも、ホールドはつかめず、マットの上に尻餅をついた。


ホールドの位置を確認しながら、どのルートで登っていくかを考える


 向野さんによると、ボルダリングは体重がある人でも、やればやるほど上達するそうだ。握力と上手さはほとんど無関係で、筋肉への負担を減らしながらホールドを持ち続ける力が大事なのだという。次はどこに足を置き、体重をどこにかけたら効率的に登れるか――。体だけでなく頭を使うスポーツだ。


 「ナイス!」「右足を青の9に置いて」。壁の全体像を後方から把握して、アドバイスを送ってくれる人たちと”一体”になって上を目指すのもボルダリングの楽しさだ。ゴールの喜びと達成感を共有し、交流の輪が広がっていく。


体育館を改装・整備した「K-WALL」


 営業時間は平日が午前10時~午後10時、土日・祝日が午前10時~午後8時で、水曜定休。料金は2時間550円、1日1100円。専用シューズは300円で借りられる。


校舎は体験型宿泊施設に

 K-WALLの隣には4月、旧校舎をリノベーションした体験型宿泊施設「カホアルペ」が新装オープンし、こちらも話題となっている。


カホアルペ入り口には、二宮金次郎像が


 カホアルペは泊まるだけでなく、展示スペースや調理室を備え、登山やたき火、星空観察などを楽しめる施設。建物に入って左手には、かつては全校児童が集った開放的なロビーが広がる。大きな窓からは、壮大な嘉穂アルプスの山々が見渡せた。


窓から嘉穂アルプスが望める開放的なロビー


 建物を外から眺めていると、児童たちの歓声が聞こえてきそうだが、一歩中に入ると、ここで働く卒業生でさえ「昔の面影はほとんどない」という変わりようだ。児童たちの靴箱があったスペースは立派なフロントになり、往時を想像するのは難しい。


かつて靴箱があった場所は、立派なフロントに


 教室が並んでいた2階には、最大68人が泊まれる17の客室が整備された。1部屋4人まで泊まれる2段ベッドタイプの部屋(大人1人5000円)や、図工室などを改装したツインルーム(同6000円)がある。


客室には2段ベッドが並ぶ


 嘉穂アルプスの登山、散策の拠点としてだけでなく、観光農園「九州りんご村」や酒蔵など周辺の観光資源にも恵まれたカホアルペ。最近は国内だけでなく、中国や欧州など海外からの観光客も増えているという。


周辺に広がる豊かな自然もカホアルペの魅力


 旧小学校での宿泊や体育館でのボルダリング体験――。廃校の新たな活用法が注目され、そのノウハウを学ぶ視察を受け入れることもあるそうだ。


今夏オープンしたコワーキングスペース


 施設では、カフェのほか、コワーキングスペースも新たに開設した。カフェのおすすめメニューを聞くと、「梨のフルーツソーダ」(500円)とのことだった。


カフェのおすすめ「梨のフルーツソーダ」


 地元で採れた新鮮な梨を搾って煮詰めたシロップを炭酸で割る。嘉穂アルプスの山なみを望みながら、梨の果肉が感じられる濃厚な一杯は絶品だ。


近くの農家から運ばれ、ジュースに使われる梨


 今後は地元の農家と協力しながら、リンゴなど季節の旬のジュースを提供していく予定だという。


卒業生をはじめ地元の人たちの雇用の場にもなっている


 長く地域に愛されてきた旧足白小は、ボルダリングや宿泊を”接点”に、訪れる人たちと交流し、絆を深めていく拠点へと生まれ変わった。かつての学びやは、新たな輝きを放っている。



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