元寇防塁を観光資源に 福岡市が生の松原にある国史跡を整備

フェンス改修によって、より間近で見学できるようになった元寇防塁

 福岡市は、同市西区の生(いき)の松原にある国指定史跡「元寇(げんこう)防塁」を観光資源として活用しようと、環境整備を進めている。防塁をより間近で見学できるようにしたり、新たな説明板を設置したりしたほか、近くには駐車場とトイレも新設。市は「福岡の貴重な史跡を身近に感じてもらいたい」としている。

歴史が間近に!リアルに!

 市は2000年、生の松原地区の元寇防塁のうち、中央部の長さ約50メートルの部分について築造時と同じ高さ約2.5メートルに復元し、公開を始めた。8月、これまで防塁を囲っていたフェンスの改修工事が終わり、防塁と見学者との距離は約10メートルから最大約1メートルにまで近づいた。

 加えて、防塁後方には新たに透過型の説明板を設置。沖に浮かぶ元軍の船と見張りの武士が描かれており、板を通して海を見ると、元寇当時の風景が浮かび上がる仕組みとなっている。


透かして見ると元寇襲来の様子か浮かび上がる透明の説明版


立ち寄りやすいスポットに


 市は20年度から、東区の志賀島や西区の北崎を中心に、海辺の魅力を高めて観光振興や地域活性化につなげるプロジェクトに取り組んでおり、元寇防塁の観光資源としての活用にも力を入れている。

 生の松原地区の元寇防塁については近くに駐車場がなく、見学者から整備を求める声が上がっていた。このため、防塁から約200メートルの市道沿いに今年4月、バス1台と普通車7台が止められる有料駐車場と、屋外トイレを整備。当初は月450台程度の利用を見込んでいたが、多い時では月800台以上の利用があるなど、想定を上回っているという。


整備された「生の松原元寇防塁駐車場」


 整備費用など関連事業費には宿泊税を充当し、総額で約7800万円をかけた。市史跡整備活用課の担当者は「新型コロナウイルスの影響も落ち着き、観光需要は戻ってきている。有名な歴史上の出来事を体感でき、立ち寄りもしやすいスポットとして、魅力をPRしていきたい」と話している。


<元寇防塁>
 モンゴル帝国(元)と朝鮮半島・高麗の連合軍による侵攻(文永の役、1274年)後、鎌倉幕府が再度の襲来に備えて博多湾岸約20キロに築いた石塁。1931年以降、福岡市内の5地区11か所が国史跡に指定されている。


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