新生「ホテル イル・パラッツォ」が10月1日開業 回帰と変革
記事 INDEX
- 日本初のデザインホテル
- 巨匠の作品が再び共演!
- 昼夜1900円のビュッフェ
「日本初のデザインホテル」とされる福岡市中央区春吉の「ホテル イル・パラッツォ」が、1年9か月にわたる改装を経て10月1日にグランドオープンします。かつての意匠を復活させるなど開業当時の理念に立ち返る一方、ビュッフェ形式の食事など近隣住民らの日常使いを促す試みも始めます。地域や観光客にこれからも愛される施設へ、新たなスタートを切ります。
日本初のデザインホテル
「(開業時の)志を新しいかたちにする『リ・デザイン』ができて、うれしい。時代とともに生き続ける社会資産になってほしい」。内田デザイン研究所(東京)の長谷部匡代表(62)は9月26日の内覧会で、再出発するホテルへの熱い思いを語りました。
同研究所は、日本を代表するインテリアデザイナーで、イル・パラッツォの開業時に内装を担った内田繁氏(1943~2016年)が創設し、今回の改装にも尽力しました。
1989年に開業したこのホテルは、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞したイタリア人建築家のアルド・ロッシ氏(1931~97年)が設計。内田氏を含む多彩な才能が”共演”する画期的なホテルとして大きな注目を浴びました。
イル・パラッツォは、イタリア語で「館」や「邸宅」といった意味。その印象的な外観はもちろん、ロッシ氏ら4人による四つのバーやディスコなどを備え、若者らの人気を集めました。
地域のイメージを明るくしたことも評価され、90年に福岡市都市景観賞を受賞。91年には米国外で初めて米国建築家協会名誉賞に輝くなど、高い評価を受けました。
巨匠の作品が再び共演!
ただその後、所有者の移転などを経て、当時の意匠は一部失われていました。2016年から実質所有するいちご地所(東京)と、19年から運営するグループ会社のワンファイブホテルズ(福岡市)がテコ入れ策を検討し、「原点回帰」と「リ・デザイン」を掲げて刷新することになりました。
総事業費は約18億円。地下1階、地上8階の建物は、2階にあったフロントを地階に移すなどして、外観はそのままに部屋数を62室から77室に。2~8階をつないでいたエレベーターは、地下1階まで結ぶようにして利便性も高めました。
特に趣向を凝らしたのは、地下1階のラウンジ「エル・ドラド」です。かつてはディスコやイベントホールとして使われていた空間を、宿泊客や来店客がビュッフェ形式の食事などを楽しめる約130席のスペースに一新しました。
エル・ドラドは「黄金郷」を指し、館内にあったロッシ氏デザインの同名のバーから、黄金のファサード(壁面)を移設。水の揺らぎが目を引く内田氏の作品「ダンシングウォーター」とともに配置し、品格と癒やしを両立させた空間に仕上げています。
このほか、ロッシ氏の線画をエレベーター前の鏡に取り入れたり、スタッフのユニホームも開業時に手がけたデザイナーに監修してもらったりと、スタート時の思いをくむ品々が随所で来館者を迎えます。
宿泊料は、独自のAI(人工知能)による価格変動制で、開業時点では1室2万5000~3万円程度を想定しています。
ちなみにロッシ氏と内田氏が共同で手がけた建築物は、国内ではイル・パラッツォと門司港ホテル(現・プレミアホテル門司港、北九州市)の2か所だけとのことです。
昼夜1900円のビュッフェ
イル・パラッツォでは、この新ラウンジで7~21時にビュッフェ形式の食事を提供し、宿泊客は追加料金なし、ビジターは朝2500円、昼・夜1900円で、50種類以上のフードとソフトドリンクを楽しめます。21時から翌3時はバーとして営業します。
こうした取り組みは、全国のホテルでも珍しいそうです。バブル期にはディスコなどがあり大人の男女による利用が目立った空間ですが、今回の改装を機に近隣住民や女性客、観光客ら幅広い層への浸透を図りたい考えです。
ワンファイブホテルズの北﨑堂献社長は「地域の方に愛され、旅行客からも支持されるホテルとして歩んでいく。近隣の方々にぜひ気軽に訪れていただき、宿泊者と同じ空間を共有していただきたい」と呼びかけています。
ホテル概要
名称 | HOTEL IL PALAZZO (ホテル イル・パラッツォ) |
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所在地 | 福岡市中央区春吉3-13-1 |
客室数 | 77室 |
電話 | 0570-009-915 |
公式サイト | HOTEL IL PALAZZO |