障害のある人の絵画で彩り 天神に「街なかストリート美術館」
再開発が進む福岡市・天神で、工事中のビルの仮囲いに、精神、知的障害などがあるアーティストが手がけた絵画が「街なかストリート美術館」として飾られている。作品は全て原画で、関係者は「ハケの動きや迫力を楽しんでほしい」と呼びかけている。
ビル工事現場に原画12枚
大きく実ったみずみずしいイチゴに、画面をはみ出すほど迫力のある女性――。商業施設「イムズ」跡地とオフィスビル「福岡天神センタービル」の仮囲いには、縦横約2メートルの絵が計12枚並ぶ。
いずれも、佐賀県基山町でアート活動を行う就労継続支援B型事業所「PICFA(ピクファ)」に通うダウン症や精神障害などがある人たちが描いた作品だ。事業所では、絵画や刺しゅうなどを制作。イラストがコンビニ大手ローソンのコーヒーカップに採用されたことがあるほか、海外のアパレルブランドとも取引がある。
作者本人の自己実現にも
街なかストリート美術館は、子どもたちに文化的な体験をしてもらうためのイベント「FUKU OKA Christmas Festa」の一環で、ピクファの施設長・原田啓之さん(50)と九州大学の特任准教授・羽野暁さん(47)が企画した。
羽野さんは障害がある学生や教職員が利用しやすい学内環境の整備を研究していて、これまでも学内に障害がある人が描いたアートを飾ってきた。「人が行き交うオープンな空間に飾ることで、目にする人に何かしらの気づきがあれば」と考え、ビルを建設する工務店に協力を呼びかけた。
絵画の横には「作品のほとんどは筆一本で描く」「どこでも絵が描けるように画材の入った重いリュックを常に持ち歩く」といった作者の紹介文と、写真も添えられている。羽野さんは「天神という街なかに自身の作品が飾られることで、作者本人の自己実現の一つになるだろう」と話し、原田さんは「障害のあるなし関係なく、単純に作品を楽しんでもらえれば」と期待する。
イムズ跡地は当面の間、センタービルでは3月末まで展示される予定。