1964年東京五輪で聖火ランナーが履いたシューズの復刻版が完成

 福島県を3月26日にスタートする聖火リレーを前に、1964年の東京五輪で聖火ランナーが履いたシューズの復刻版ができました。当時製造した老舗靴メーカー「アサヒシューズ」(福岡県久留米市)が、実物や資料が残っていない中、善意の出会いと社員の努力により再現したものです。

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1足ずつ手作業で

 2月28日に訪れた久留米市洗町の工場。従業員が1足ずつ丁寧に白いゴムテープと靴底に黒いゴム製のパーツを貼り付け、復刻版「アサヒランナーシューズ」の生産が進められていました。


手作業で丁寧に作られる復刻版シューズ

 靴をよみがえらせる構想は2018年8月、前回の東京五輪取材を進めていたテレビ局からの問い合わせをきっかけに始まりました。1966年に発行された「第十八回オリンピック競技大会公式報告書」には、日本ゴム(現・アサヒシューズ)が国内外の正走者用に5000足を提供したと記録されています。その頃を知る社員はほとんどおらず、社内に実物もないため、当時の生徒が聖火ランナーを務めた福岡中央高校(福岡市中央区)に寄贈されたシューズを借りては返す――を繰り返したそうです。


山形県の男性が保管していたシューズ

 苦労しながら"幻のシューズ"の再現に取り組んでいた2019年2月、山形県で正走者を務めた男性が、保管していたシューズを寄贈してくれました。そのシューズの靴底は、つま先とかかとのゴムが二重構造になっており、濡れた路面でも滑らないよう深い溝が刻まれていました。


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新たな工夫も加えて

 復刻版は当時と同じ白無地のシンプルなデザインで、中敷きのクッション性を高めるなど新たな工夫も凝らしました。製造のチームリーダーを務める商品企画部長補佐の古賀稔健さんは「手探りだったが製造までたどり着け、うれしい。当時を知る方には懐かしんでもらい、若い人には前回の東京五輪を身近に感じてほしい」と話しています。


よみがえった"幻のシューズ"


 復刻シューズは1足8000円(税別)です。展示会などを通じた受注販売が中心ですが、福岡市博多区にあるアサヒシューズ直営店でも4月から数量限定で販売するそうです。 


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