東京五輪の聖火をつないだ靴を復刻 アサヒシューズが半世紀の時を超えて

東京五輪の聖火リレーに用いられたシューズ(左)と復刻版

 1964年に開催された東京オリンピックの聖火リレーで正走者が履いたシューズを福岡県久留米市の靴メーカー「アサヒシューズ」が復刻しました。担当者は「当時の最高の技術で作ったシューズの復刻版を多くの人に見てほしい」と話しています。


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実物と設計図を求めて奔走

 前回の東京オリンピックでは、トーチを持つ正走者、副走者と伴走者の計約10万人が、空路を挟んでギリシャから東京まで聖火をつなぎました。1966年に発行された「第十八回オリンピック競技大会公式報告書」には、日本ゴム(現・アサヒシューズ)が正走者用に5000足のシューズを提供したことが記録されています。

 復刻版製造のチームリーダーを務めるアサヒシューズ商品企画部長補佐の古賀稔健さんは「シューズを提供したことを、ほとんどの社員が忘れていました」と苦笑いします。半世紀以上前の靴を再現する取り組みが始まったのは2018年8月、テレビ局からの問い合わせがきっかけでした。

 当時を知る社員はほとんどおらず、社内に実物もありません。福岡中央高校(福岡市)に残されていたシューズを撮影させてもらったり、設計図を探したりと、実現へ奔走していた2019年2月、思いがけない知らせが舞い込みました。

 聖火リレーの正走者を務めた田口重之さん(山形県米沢市)がシューズを大切に保管しており、「生まれ故郷のアサヒシューズなら大切にしてもらえるだろう」と寄贈してくれたのです。同じ頃、所在不明だった設計図が社内の資料室からほこりをかぶって出てきました。


田口さんが保管していた当時のシューズ

 "幻のシューズ"は白無地のシンプルなデザイン。靴底のゴムはつま先とかかとが二重構造で、濡れた路面でも滑らないよう深い溝が刻まれ、段差でつまずかない工夫も施されていました。


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会社の伝統と原点を再確認

 「靴底の工程は1足ずつ手作業で行う必要があり、熟練の技が求められたはず」。復刻版の設計を担った商品デザイン課の猿渡健太さんは、当時の技術力に驚いたそうです。
 開発陣らはその素材や構造の細かい分析を進め、幻のシューズを今によみがえらせる材料、品質などの検討を重ねました。通常の4倍に当たる40足以上の試作品を作って改良を繰り返し、復刻版は9月に完成しました。


笑顔の古賀さん(左)と猿渡さん


 古賀さんは「業界トップレベルの誇りをかけて作った靴を復刻し、会社の伝統や靴づくりの原点を振り返ることができました」と話しています。復刻版は2020年4月から、展示会などでの受注販売を予定しているそうです。

アサヒシューズ
 1892年創業。運動靴や長靴などの製造で業績を伸ばし、「アサヒ靴」のブランドで業界を先導した。しかし、低価格の輸入品に押されて1998年に会社更生法の適用を申請。経営再建を進めて2017年に更生計画を完了し、「アサヒコーポレーション」から現在の社名に変更して新たなスタートを切った。


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