給食の昆布で育て!おいしいアワビ 餌代かからず生ごみ削減
学校給食で使われ、これまで廃棄されていた昆布を餌に、高級食材のクロアワビを育てる中間育成試験が、福岡県福津市の県立水産高校で進んでいる。餌代がかからず、低コストで育てられることに加え、生ごみにあたる昆布を焼却しないことで温室効果ガスの排出を減らし、海水温上昇などの環境負荷を抑える狙いもある。
廃棄物を有効に利用
取り組んでいるのは、福津市と宗像漁協津屋崎支所、同校。同市では小中学校の給食でだしを取った後の昆布が、多い月には40キロ以上、捨てられる。水分を多く含む生ごみで、焼却には多くの燃料が必要になる。
その昆布を活用する策として着目したのが、「アワビの王様」とされ、漁獲量の減少も指摘されるクロアワビの育成だった。
市農林水産課によると、稚貝の価格は体長1センチの個体で約15.6円。食べる力が強く、放流が可能な3センチになると、約91.6円と6倍近くに跳ね上がる。津屋崎支所では毎年、漁業資源の維持や増進を目的に、3センチを1万~1万4000匹購入し、放流。今年度は2万匹を予定している。
もし1センチの段階で購入し、餌代がかからない廃棄予定の昆布を与えて3センチまで育てることができれば、コスト削減につながる。さらに昆布を焼却しなくて済むため、二酸化炭素を排出せず、漁業にとって深刻な問題である海水温上昇の抑制にも貢献できるとのもくろみだ。
水産高校で育成試験
市と支所は、地元の水産高に協力を要請し、6月下旬に1センチの稚貝2000匹と昆布を搬入。殺菌した海水をかけ流す、コンクリート水槽で飼育を始めた。
アクアライフ科3年の杉山優太さんと畑和緒哉(なおや)さんが課題研究として、満潮(みつしお)隆寛教諭の指導を受けながら世話をする。朝夕に水温や塩分濃度を測り、食べ具合を確認しながら昆布を取り換える。
月に1度、200匹を抽出。暴れないよう麻酔をかけ、体長と体重を測定し、記録する。当初は1センチに満たない個体も多かったが、昆布を食べて4か月余りが経過した現在は平均2.4センチ、大きいものは3センチを超えるまでに成長した。
水産高で昆布を食べて育ち、環境に配慮した付加価値を持つ個体であることが分かるよう、殻にタグを付け、2人が在学中に最初の放流を行う。漁獲できるのは2、3年後という。
卒業後は漁師になる杉山さんは「安く育て、数も増えれば、高いアワビを安く食べてもらえるようになる。魚がすみやすい海にしていくことにもつなげたい」と話す。