明日の空の状態は? 福岡県がPM2.5など大気汚染予報を開始

1月から始まった福岡県の「大気汚染予報」
記事 INDEX
- イラストで分かりやすく
- 大気の流れも動画で確認
- 長年の研究が報われた!
福岡県は、3日先までのPM2.5や光化学スモッグなどの状態を知らせる「大気汚染予報」を1月から始めました。県の研究所が独自開発した予測システムで、担当者は「天気予報のように、大気汚染物質の濃度予測を毎日発表するのは珍しく、自治体では初の取り組み。空がかすんで気になる時、参考にしてください」と話しています。
イラストで分かりやすく
これから洗濯物を干して大丈夫? 運動会の練習を校庭で行って問題ないか?――。
「空がかすんで見えることが多くなると、住民や学校関係者からそういった問い合わせが相次ぎます」と、県環境保全課の丸林啓太・大気係長は言います。
県が大気汚染予報の発表を始めたのは1月29日。光化学スモッグの原因となる光化学オキシダント、大気中に浮遊する微小粒子状物質(PM2.5)、四日市ぜんそくなど公害病の原因物質として知られる二酸化硫黄、黄砂の4項目について、3日先までの見通しをサイトで伝えます。
予報は福岡、北九州、筑豊、筑後の4地域に分け、黄砂は3段階、そのほかは5段階のレベルで6時間ごとに区切ってイラストで表示します。
汚染のレベルは環境省の基準を参考に、基準値以下の「低い」「少し高い」、基準値を超える「高い」、呼吸器などに疾患のある人、高齢者や子どもは野外の激しい運動を控えるように勧める「かなり高い」、注意報・注意喚起を発令する状態の「非常に高い」といった表記で示します。
大気の流れも動画で確認
サイトでは、予測される汚染物質の動きを大気の流れとともに動画で確認できます。マップ上に5キロ・メートル四方で色分けされ、ボタンを押すと1時間おきの変化が表示されます。地図を拡大すれば、より詳しく見ることができます。
福岡県は季節的な風の影響で、秋から春先にかけて黄砂が飛来し、PM2.5の濃度が上昇する傾向にあります。紫外線が強い春から夏は、排ガスなどの成分と紫外線が化学反応を起こし、光化学オキシダントの濃度が高くなる時期でもあります。
丸林さんは「公害がひどかった時代からすると、環境はだいぶ改善されました。しかし、人の感覚はかなり敏感で少しの変化でも感じ取ります。日常で気になった時に予報を見て、不安を少しでも取り除いてもらえればうれしい」と話します。
長年の研究が報われた!
予報は、県保健環境研究所(太宰府市)が2018年度から開発を進めてきた「大気汚染予測システム(Fcast)」のシミュレーション結果を用いています。研究所の山本重一・大気課長と山村由貴・研究員は「これまでの取り組みが報われました」と話します。
県は、公害問題が深刻だった1969年から光化学オキシダントや二酸化硫黄などの観測を続けています。7~8年前に山村さんが「大気汚染は何が原因で、どこで発生するのだろう? データを生かして未来を見通せないか」と考え、Fcastの開発がスタートしました。
Fcastは、気温や風、気圧などのデータを基に、化学反応や物質の流れ方を計算して大気の状態をシミュレーションします。AI(人工頭脳)も活用して予想精度を向上させました。AIの学習には、県内55か所で集めた観測データを活用しているそうです。
例えば標高の高い場所では、気温が低くなり、化学反応の速度が遅くなることなどが考えられます。わずかな高低差などはシミュレーションだけでは表現できず、細かい地形の変化や汚染物質の排出量をAIが補正してくれます。山村さんは「先人が残してくれた観測設備や蓄積されたデータがあったからこそシステムができました」と説明します。
服部誠太郎知事は1月28日の定例記者会見で、「ぜひ大気汚染予報を日々の生活に役立てていただきたい」と呼びかけました。山本さんと山村さんは「研究成果が認められて本当にうれしい。呼吸器系に疾患がある人やアレルギー体質の人、小さい子どもや高齢者がいる世帯など様々な人のために役立ってほしい」と願っています。