JR九州の新しい観光列車「かんぱち・いちろく」がデビュー

完成した新たな観光列車「かんぱち・いちろく」

記事 INDEX

  • 久大線をのんびりと
  • ど~んと杉の一枚板
  • 「育まれる列車に!」

 JR九州の新しい観光列車「かんぱち・いちろく」(博多―由布院・別府)が4月26日に走り始めます。4~6月に展開される大型観光企画「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」の盛り上げ役としても期待されるニュートレイン。運行開始を前に北九州市内で開かれた完成披露式典を訪ねました。

久大線をのんびりと


除幕して車両の完成を祝う関係者たち

 「久大本線の動くスイートルーム。本当に素晴らしいものができあがった。全国から来ていただきたい」。JR九州の古宮洋二社長は、4月19日に小倉総合車両センターで開いた式典で自信を示しました。

 かんぱち・いちろくは3両編成。肥薩線で活躍した観光列車「いさぶろう・しんぺい」(キハ47形、昨年10月に引退)とキハ125形の車両を、同センターで改造した定員60人の列車です。

 木曜は運休し、金~水曜に久大線経由で各日片道1本の運行。月・水・土曜の博多発は「かんぱち」号、火・金・日曜の別府・由布院発は「いちろく」号として走ります。

 テーマは「ゆふ高原線の風土をあじわう列車」。同じ区間を運行する観光列車「ゆふいんの森」より1時間半ほど長い約5時間をかけ、終着駅に向かいます。沿線の景色が楽しめるように速度を落とし、田主丸(福岡県久留米市、かんぱち号)や天ヶ瀬(大分県日田市、いちろく号)などの停車駅で、歓迎イベントや地元グルメの販売といった「おもてなし」を受けます。


披露された「かんぱち・いちろく」

 なお、「かんぱち」は久大線の敷設に尽力した、地元の蔵元(現・八鹿酒造)の3代目、麻生観八氏(1865~1928年)に由来。「いちろく」は、旧大分県農工銀行の頭取で久大線の湯平~北由布(現・由布院)駅間の整備に尽くした衞藤一六氏(1870~1928年)にちなんで命名したそうです。


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ど~んと杉の一枚板


黒を基調に金色が鮮やかなデザイン

 外装は、艶(つや)のある黒を基調としたデザイン。由布岳と「八」「一」「六」を描いたロゴマークも目を引きます。側面には、久大線にある全37駅の名称が金色のローマ字で記されています。


各駅名が記されている

 1、3号車に計60席(すべてグリーン席)を備え、2号車は共用ラウンジです。福岡、大分にゆかりのアーティスト10組による24作品が随所に飾られ、旅の時間をより豊かなものにしてくれそうです。

1号車


 大分・別府エリアの風土がモチーフ。ソファ席は火山や温泉をイメージさせる赤色をベースとしています。テーブルには大分産の杉を使用。天井や手すりも杉板で統一し、温かみを感じさせる空間となっています。

2号車


 「ラウンジ杉」と名付けられ、乗客が自由に過ごすことができる共用スペース。樹齢約250年、長さ7.9メートルの杉の一枚板カウンターが据えられ、大きな窓から美しい景色を楽しめます。沿線のグルメや飲み物、オリジナルグッズの販売も行います。

3号車


 福岡・久留米エリアの風土に発想を得て、沿線の平野や山々の緑と、福岡の県章にも使われる青を基調とした落ち着いた色合いとなっています。テーブルには福岡県産の杉を採用。2~4人向けのBOX席は半個室型で、くつろげるよう配慮されています。


イタリアン(左、土曜)や和食(日曜)のイメージ(提供:JR九州)

 車内では2段重の料理が提供されます。時節に応じた地元食材を中心に使用。かんぱち号は福岡、いちろく号は大分の名店がそれぞれ手がけ、曜日により和食、イタリアン、フレンチのいずれかとなります。

「育まれる列車に!」

 料金はソファ席(2~3人)、BOX席(2~6人)が1人1万8000円(小学生1万5000円)、畳個室(4~6人)が2万3000円(同1万9000円)。乳幼児は無料(大人・小学生1人あたり幼児2人まで。3人目からは小学生料金が必要)です。


車両への期待を語る古宮社長(左)と八幡社長

 デザインを担った「IFOO」(鹿児島市)の八幡秀樹社長は式典で、「お客さまファーストを軸に『ナチュラルモダン』の列車が完成した。地域に愛され、利用客に育まれることを祈念する」と語りました。

 JR九州の古宮社長は「域外から来ていただき、車両や地元とのふれあい、食事、アートなどを体感してもらうことが九州自体の宣伝になる。非常に期待している」と話しました。


撮影に臨む古宮社長(左から2人目)と八幡社長(同3人目)ら


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