山里に現れた巨大な山犬が話題に 筑前町の有志がわらで制作
安の里公園に鎮座する、わらで作った巨大な山犬
福岡県筑前町の田んぼの中に、巨大な山犬のかかしが登場し、注目を集めている。高さ6.5メートル、長さ13メートルの迫力ある姿だ。
野生の"気配"を再現
山犬が鎮座するのは、町内にある安の里公園。地元の若手有志による「筑前若者(わっかもん)会」や住民らが中心となって制作した。稲刈り後、平日の夜や休日に集まって作業に取り組み、約3か月かけて完成させたという。
「地域の呼び物にしよう」と、これまでに「ゴジラ」や「宇宙戦艦ヤマト」「ティラノサウルス」などの巨大かかしを手がけてきた。11回目となる今年は、鳥獣から作物を守るかかし本来の役割と、災いを払って田畑を守る神のイメージを重ね、「山犬」を題材に選んだそうだ。
山犬は、絶滅したニホンオオカミの別名でもある。姿を伝える資料が乏しく、作品のイメージを固める作業から始めた。シベリアンハスキーのほか、インターネットの画像、映画のワンシーン、フィギュアなど様々な素材を探し、失われた野生の気配を感じ取ったという。
制作で最も苦心したのは毛並みの表現。「お座り」のポーズのように脚を折り曲げた姿勢を取りつつ、体毛の自然な流れをわらでどう再現するか試行錯誤が続いた。
地域の絆がより強く
筑前町の稲刈り後の風物詩としてすっかり定着した「巨大わらかがし」。近年はインドネシアやベトナムなど海外からの技能実習生も増え、制作現場は国際色豊かで温かな交流の場にもなっている。「地域全体で盛り上げようという思いが年々強くなっている」と町の担当者は笑顔を見せる。
2024年に制作した「ゴジラ-1.0」は、「わらでつくった最も大きいフィクションのキャラクター像」として、ギネス世界記録にも認定。アートとしての存在感も確かなものとなった。
わらの状態にもよるが、山犬のかかしは26年1月下旬まで展示する予定だ。「残してほしい」との声が毎年のように上がるというが、しっかりした鉄骨で支えているとはいえ、表面のわらは風雨にさらされ傷んでいく。だからこそ、新たな造形が毎年考案されて地域の交流が深まり、訪れる人たちを喜ばせているのだろう。

















