危機を越えて「魅せる酒蔵」に 宗像市で新生・伊豆本店が始動
新設された酒蔵BARでは日本酒と和食を楽しめる
記事 INDEX
- 先代の逝去で窮地に
- バーや見学・購入も
- 新銘柄「宗像」誕生
創業300年を超える福岡県宗像市の老舗酒蔵「伊豆本店」(伊豆寛子社長)が1月7日、約2年の休業を経て改装オープンしました。先代蔵元の逝去で危機に直面したものの、大手食品メーカーのグループに入り、改装に着手。新商品も加えて、新たな一歩を踏み出しました。
先代の逝去で窮地に
伊豆本店は1717年(享保2年)創業。代表銘柄「亀の尾」を手がけ、シンボルの茅葺(かやぶ)きの屋根や六角形の煙突とともに、地域に親しまれてきました。
伊豆社長の夫で12代蔵元の善之さんが酒造りを継いでいましたが、2023年7月に病気で他界。杜氏(とうじ)は善之さん1人だけで、酒造りは中断を余儀なくされました。
事業継続が難しくなる中、動いたのが「茅乃舎だし」などで知られる総合食品メーカー・久原本家グループ(久山町)の河邉哲司社長でした。母の実家が伊豆本店だったうえ、茅葺き屋根の葺き替え作業に感銘を受け、飲食店「御料理 茅乃舎」(同)も茅葺きにした縁もあり、24年4年に伊豆本店をグループに迎え入れました。
受け継がれてきた製法「槽(ふな)搾り」は体力はもちろん、手間も時間もかかるなど、従来通りに酒造りを続けるのは困難でした。それでも「歩みを受け継ぎ、宗像という地に根付く酒造りを大事にしたい」と、歴史ある建屋を生かしつつ最新設備を導入することを決断。冬だけでなくほぼ一年中、生産できるようにしつつ、観光スポットとしても地域に貢献することを目指して、改装を進めました。
バーや見学・購入も
改装のテーマは「魅(み)せる酒蔵」。約1年8か月の改装期間を経て、およそ5400平方メートルの敷地内に、酒造りはもちろん、観光客らに見学や飲食、買い物も楽しんでもらえるよう、五つの施設を設けました。
醸造蔵
醸造蔵は、新しい発酵タンクや圧搾機などを導入。見学スペースからガラス越しに、蔵人たちの作業を間近に見ることができます。
酒蔵BAR
かつて「搾り」の作業場だった建屋は「酒蔵BAR」に。15人ほどが立ち飲みできるスペースで、伊豆本店の日本酒の飲み比べや、久原本家らしい酒肴(しゅこう)とペアリングが楽しめます。
直売所
母屋を改装した直売所では、伊豆本店の日本酒を販売。復活した「亀の尾」(純米酒、720ミリ・リットル入りで税込み2420円)は、直売所限定品です。和食とともに味わってもらおうと、久原本家が手がける食品も並びます。
甘味
テイクアウトコーナーでは甘味を提供。酒かすを使った「宗像 花酒(はなさか)まんじゅう」、宗像産の塩やイチゴ「あまおう」など3種類の味わいの「宗像ジェラート」を用意しています。
歴史展示
このほか、伊豆家に伝わる品や、長年の酒造りを支えた道具などを紹介する資料館も開設。改装を機に見つかった恵比須天瓦なども展示されています。
新銘柄「宗像」誕生
新しい杜氏を迎えて商品開発にも挑み、誕生させたのが新銘柄「宗像」です。
3種類の酒米を採用し、宗像市産か福岡県産を使用。「夢一献(ゆめいっこん)」の純米酒は税込み3300円(720ミリ・リットル入り)、「山田錦」と「寿限無(じゅげむ)」の特別純米酒は各税込み3850円(同)です。
改装開業を祝う1月7日の式典で、久原本家の河邉社長は「いろいろな商品づくりを考えているので、期待してほしい。あがいてチャレンジして、一歩でも前に進む酒蔵になりたい」とあいさつしました。
伊豆本店の伊豆社長は「(存続の危機から)この日を迎え、『奇跡の酒蔵』と言っても過言ではない。酒を飲む人も飲まない人も楽しめる新しい観光スポットとして、宗像に貢献できるよう精いっぱい頑張っていく」と語りました。
◆店舗概要
名称:福岡 宗像 酒蔵 伊豆本店
所在地:福岡県宗像市武丸1060
営業時間:10:00~17:00
定休日:不定休
TEL:0940-32-3001
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