2017年の九州北部豪雨で被災し、過疎化も進む福岡県の東峰村と添田町で、著名な音楽家によるコンサートが開かれている。音楽を通じて地域振興を行う県などの事業の一環で、町村外からも人を呼び込むきっかけとなっている。
2月8日、添田町のオークホールの一室で、九州交響楽団のコンサートマスターで、バイオリニストの西本幸弘さんと、全国で演奏するピアニスト外山啓介さんのデュオコンサートがあった。スペインの作曲家サラサーテの「チゴイネルワイゼン」、映画音楽など10曲ほどを披露し、約60人が聞き入った。
1月12日には東峰村で、「マツケンサンバ2」などの作曲で知られる宮川彬良さんらのワークショップとミニコンサートがあった。宮川さんは「作曲の原点は鼻歌。子どものときはみんな作曲家だったんじゃないかな」と話し、スーパーなどのチラシに並ぶ言葉を使って、参加者と即興のメロディー作りを楽しんだ。
これらは豪雨被災地の振興を目的に、県などが2023年度から実施する「アーティスト・イン・レジデンス」の一環として開催。芸術家が創作活動を行う内容で、24年度も若手音楽家4人が添田町と東峰村に滞在して作曲に取り組んでいる。宮川さんと西本さんはアドバイザーで、事業を盛り上げようと2町村で計6回のミニコンサートを開催した。
著名な音楽家とあって町村外からの参加も多く、福岡市から宮川さんのワークショップに参加した小学5年の男子児童(11)は「難しかったけれど、言葉からイメージを膨らませて曲にするのがおもしろかった」と話した。何度もコンサートに訪れているという福岡県大任町の会社員男性(64)は「プロのすばらしい音やテクニックに感動した。こんなに近くで聞ける機会はめったにない」と喜んでいた。
西本さんは「僕たちもお客さんもコンサートを通して成長している。音楽は心を柔らかくし、音楽のあるところに人は集まる。地域に足を運ぶ人をもっと増やしていけたら」と話す。
3月30日には添田町のオークホールで、宮川さんの監修、九州交響楽団による演奏で、若手音楽家の作曲の成果を披露するコンサートが開かれる予定だ。