大雨で浸水 広川町の久留米絣工房が6月21日に再開

2025.06.20

再建された工房を紹介する森山さん

 2023年7月の記録的大雨で浸水被害を受けた広川町の「藍森山・森山絣(かすり)工房」が復旧を終え、6月21日に再開する。工房の片付けには知人らが協力し、クラウドファンディング(CF)などで資金を集めたという。5代目の森山哲浩さん(65)は「多くの人に助けられた。工房を拠点に、昔ながらの手作業で現代に合った久留米絣を発信していきたい」と感謝している。

江戸時代末期創業の老舗 2023年に被災

 工房は筑後地方を代表する伝統工芸品「久留米絣」の老舗織元。江戸時代末期の1858年(安政5年)創業で、久留米絣協同組合に参加する約20の織元で最も歴史が古いとされる。すくもに木灰の上澄み液などを加えた自然の染料にこだわり、機械織りが増える中、手織りを守り続けてきた。

 2023年の大雨では、近くの広川が氾濫し、工房に泥水や土砂が押し寄せ、最大で床上約90センチまで浸水。地面に埋め込んでいた藍染めの染料を作る甕(かめ)約50個に泥水が流れ込んだ。甕は浮き上がったり、ぶつかり合ってひびが入ったりして多くが破損し、中の染料も使えなくなった。

 糸を巻く機械なども水につかった。築100年以上の木造2階建ての工房は、土壁の土が剥がれて穴が開き、はりの一部が腐るなどの被害も出た。森山さんは「廃虚のようになり、どうしたらよいかわからず、ふさぎ込んだ」と振り返る。

知人ら協力、CFの支援・・・「多くの人に助けられた」

 当初は23年末までの工房再開を目指していたが、復旧費用が約7000万円に上ることが判明。行政の補助金などを活用しても約2300万円の自己負担が必要だった。展示販売会で被災を免れた商品を売り、復旧費用に充てた。24年11月にCFで支援を募ったところ、第一目標の300万円を上回る500万円以上の支援が寄せられた。


復旧した工房前で「現代に合った久留米絣を発信していきたい」と意気込む森山さん

 新しい工房は、熊本県産の木材を屋根に使用。地面や工房の床を15センチほど高くし、工房内の床には溝や排水溝を整備した。水害の被害を免れた甕約20個を藍甕に使い、工房の床には、破損した甕の破片をちりばめて埋め込んだ。

作業見学や藍染め体験も「国内外の人 集まる場所に」

 工房内部は吹き抜けとし、見学客が1階からも2階の作業風景を見られるようにした。ハンカチの藍染め体験などを受け入れていくという。

 重要無形文化財久留米絣技術保持者でもある森山さんは「近所の人たちが気軽に訪れるように開放し、国内外の人たちも集まる場所になるとうれしい」と意気込んでいる。


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