伝統が描くアート ショールーム天井にすだれの”オーロラ”
福岡県広川町のすだれ製造販売会社「鹿田産業」は、建築家・隈研吾さんの設計でショールームを改装し、天然素材の竹を使ったユニークなすだれ製品や、筑後地域の伝統工芸品などを紹介している。同社のすだれはホテルや店舗の内装などにも使われており、「国内外で竹や木材、和紙などの天然素材への関心が高まっており、空間デザインそのものを提案していきたい」としている。
空間デザインを提案
同社は、新型コロナウイルスの規制緩和に伴うインバウンド(訪日外国人客)需要の回復を見込み、ショールームを大幅に改装して今年1月に再オープン。商品の注文や家具の開発などを通じて、十数年来の交流がある隈さんの設計事務所にデザインを依頼した。
ショールームは広さ約500平方メートル。「天然素材を使った次世代のホテル空間」がテーマで、エントランスやフロントラウンジ、客室などホテルをイメージした構成になっている。黒を基調にした落ち着いた雰囲気で、天井には「オーロラ」と名付けられた全長約70メートルのすだれが曲線を描き、竹の優しい香りがほのかに漂う。
隈さんらがデザインした椅子などの籐(とう)製の家具が置かれ、竹ひごの太さを変えながら織った掛け軸のようなすだれが空間を彩る。
棚には、竹製の筆記具やコップ、歯ブラシなど客室の備品も展示。シェードカバーに八女和紙を使ったスタンド照明や大分県別府市の竹細工などの伝統工芸品も並ぶ。
筑後の伝統工芸を紹介
福岡県内にある知事指定特産工芸品・民芸品35品目のうち、大川組子や八女竹細工、八女すだれなど21品目を筑後地域が占める。鹿田産業の鹿田和正社長は「ホテルや店舗で天然素材の良さを取り入れた空間づくりを考えるなら、ここに来てイメージを膨らませてほしい」と話す。
筑後織の「宮田織物」(筑後市)も、このショールームで自社製品の甚平や作務衣(さむえ)などを展示したことがある。吉開ひとみ社長は「ホテルを改装される際には、筑後織の部屋着を採用してほしい。外出時にも着られるし、宿泊客の満足感が高まるはず」とアピールしていた。
ショールームの開館時間は平日午前10時~午後5時。問い合わせは鹿田産業(0943-32-1141)へ。